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女性活躍が進む老舗企業「一保堂茶舗」会社見学セミナー@京都

働く女性の皆さんこんにちは。今年の2月末に「女性が活躍する企業に見学に行ってヒントを得る」ために、ナチュラルリンクが女性活躍推進担当者や人事担当者対象の会社見学セミナーを開催しました。
今回お伺いしたのは、株式会社一保堂茶舗。日本茶専門店として、来年創業300年を迎える老舗企業です。「一保堂」として、京都のみならず、全国、そして海外にも絶大なファンを持つお茶屋さん。京都市「真のワーク・ライフ・バランス」推進企業特別賞を受賞されたり、海外からも視察団が訪れるなど、「ダイバーシティ、ワーク・ライフ・バランス、女性活躍が進む企業」として大変有名な一保堂茶舗の舞台裏に迫ってまいりました。

1 株式会社一保堂茶舗の概要について

数字見る一保堂ということで、一保堂さんの現状を簡単にご紹介させていただきます。

・業態 日本茶専門店(全国百貨店に出店。ニューヨークにも出店)
・社員数 210名
・正社員女性比率 65%
・女性管理職比率 課長相当職54% 係長相当職70%
・育児休業件数 27件(過去10年間実績)
・正社員離職率 5.8%(過去5年間実績)
・株式会社一保堂茶舗のサイトはこちら
(*上記は、2016年2月26日の座談会実施時のデータです)

女性管理職比率の高さ、離職率の低さを見ると、本当に素晴らしい優良企業ですが、実はつい10年前までは、女性は結婚を機に退職する方がほとんどという会社だったそうなのです。さらに「女性活躍」を掲げて特別に取り組んだことは今まで一切なく、制度も法律で定められている必要最低限なもののみだと言います。

この10年で、一保堂に一体何があったのか!?

今回は、新卒で一保堂に入社され、現在は総務人事グループリーダー荒木直人さんと、2児の母としてバリバリ働かれる総務グループ人事チーム江藤順子さんにあますことなくお話をして頂きました。

2 育休復帰社員が増えたことで、会社にはメリットしか無かった!

(写真は、総務人事グループリーダー荒木直人さん)

育休復帰社員や時短社員さんが増えると、「会社の生産性が下がる、フルで働く人が減る」ということで、会社にとってはデメリットになると捉える企業は多いです。

ただ、荒木さんは「デメリットなんて1つもありませんでした。取組みにお金がかかることは一切ないし、むしろプラスの点、メリットしかありませんでした。」と断言されていました。

具体的なメリットとしては、

1 定着率があがり、退職者が減った。
(一保堂の離職率は過去5年でたった5.8%。しかもその全員が、実家を継ぐなどやむを得ない事情の方ばかりとのこと。小売業としてはあり得ないくらい低い数字ですね)

2 育休復帰第一号の社員が同僚に良い影響をあたえてくれた
(育休復帰第一号の社員さんは、仕事ができて、復帰しても仕事への熱意や姿勢は変わらず、子どもの体調不良で欠勤することがあっても、翌日出社した時には凄まじい集中力で仕事をされる。そんな姿を見て周囲の上司や同僚も「彼女だったらみんなで応援しよう!」という気持ちになっていかれたとのことでした)

3 同僚の急な欠勤にも動じないチームが出来上がった
(育休復帰後は、子どもの発熱で急な欠勤がある、急に欠勤になったら業務はどう回せばいいのか?と最初はみんな不安だったそうですが、今ではみながほぼ動じなくなられたそう。案ずるより産むが易しだったとおっしゃっていました)

4 ダイバーシティが浸透しつつある
(時短社員が増えることで「こんな働き方もあるのだ」という認識が少しずつ浸透してきたとのこと。多様な働き方、ダイバーシティを認める風土が徐々に出来上がってきているようです)

では、このような状況を創るためには、具体的には何がポイントだったのでしょうか?

次のページ >>なぜ「女性活躍」を大々的に掲げずとも、制度が必要最低限でも、女性が活躍する会社になれたのか?その理由は…?

3 育休前の対応で、全てが決まる!

(参加者の皆さんには、お抹茶体験をしていただきました。ママ社員の江藤さんが、全員を丁寧にサポートして下さり、参加者の皆さんにも大満足な体験をして頂きました)

重要なのは、育休取得前にどのように対応するかだと荒木さんはおっしゃいました。

ポイントの1つ目は、「育休を取得する本人に復帰後の心構えを持ってもらった上で育休に入ってもらうこと

一保堂では、「両立支援制度の考え方」を記した資料が全社員に配布、共有されています。その資料をもとに、上司と育休前の本人が面談をする流れになっているのです。

そこには、こんな文言が記載されています。

両立支援制度は、フルで働けなくなった社員の生活を守るために設けているのではない。勤務できる時間が長い短いに関わらず、全員が役割責任を果たし、成果にこだわり、会社に貢献してもらうための制度だ。

また育休取得する本人には、

制度利用者は制度に甘えず、今まで以上に会社に貢献する意思を表さないと、周囲に認められない。復帰後は、今までにも増して頑張る気持ちが大切だ。

と書かれています。

またポイントの2つ目は「直属の上司が本人に対して、ケアをしつつもあくまでフェアに接すること

「両立支援制度」の資料には、管理者の方へのメッセージも記載されていますが、そこにはこう書かれています。

—-
仕事復帰し、育児や介護と仕事を両立させることは、体力的にも精神的にも並大抵のことではない。また、本人は休業前のようにフルで働けないことや、周囲に頼ってしまうことを申し訳なく思い、落ち込むこともある。上司はその気持を理解してあげよう。だからといって、特別扱いするのではなく、あくまで仕事上はフェアに接することが大切だ。

これらの考え方、心構えを、育休前に本人と上司(周囲)がすりあわせをしておくことが大変重要なのです。また、育休中のママも参加できる、ママ座談会も開催されており、そこではママ同士で経験をシェアしあったり、復帰後意識づけを行っておられます。

このママ会を発足され、運営されている江藤さんはこのようにおっしゃっていました。

「仕事と育児の両立は簡単なことではない。また現在のママ社員は、制度に甘えるのではなく、自ら家族に働きかけて協力してもらったり、民間サービスを利用する等、会社のメンバーの一員として積極的に仕事に関わろうと頑張っている。このような姿勢が周囲に見えるからこそ、上司や同僚も応援してくれるのだと思う。決して制度では解決できない、考え方の部分を、先輩から後輩に共有し、浸透させていきたい。

4 制度は至れりつくせりではなく、必要最低限でいい

一保堂では手厚い制度を用意しているわけではなく、特別な制度としては有給を1時間単位で取得できる制度はのみです。それは、両立支援は育児をする女性のためだけではなく社員全員が有効に活用できるものであるべきという視点があるから。

つまりポイントの3つ目は「制度は必要最低限でいい」ということでした。制度を充実させたとしても、実際に現場で活用されなければ意味がありません。それより、個々の状況に応じて会社が柔軟に対応する姿勢や、みなの意識を変革していくことの方が重要だとおっしゃっていました。

また、その上で荒木さんが特に意識されていたのは、

・「復帰を待ってるよー!」というオーラを全面に出すこと。「復帰してもらったらどんどん仕事を任せるよ!」ということを、ことあるごとに伝えること。

・復帰後でも要求水準は下げないこと。休んでいた期間に、能力が下がったわけではない。ただ休んでいたというだけ。また、変に遠慮して仕事を与えないことで、女性自身もモチベーションが下がってしまう。仕事は復帰前と変わらず行ってもらうこと。

最後のグループ討議の中で、江藤さんがおっしゃっていた「やってみたら何とかなりますよ!」という言葉は、参加者の皆さんの大きな希望になったようでした。

大切なことは、制度の充実ではなく、企業風土や文化、みなの考え方や意識、そういった意味での環境整備ですよね。一朝一夕にいかないからこそ、地道に積み上げてきた会社は強いと改めて感じました。

株式会社一保堂茶舗について

創業:1717年(亨保2年)
設立:1964年(昭和39年)4月
事業内容:京銘茶の加工・製造及び小売
京都本社:〒604-0915 京都府京都市中京区寺町通二条上ル常磐木町52番地
代表者: 渡辺 孝史
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