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20年後の社会と働き方改革~vol.4 30代の仕事と出産の兼ね合い

働く女性の皆さんこんにちは。「転石 ビジネスサークル」代表の小野 曜(よう)です。
女性の30代は、結婚、出産、キャリアをどうするか、悩み多き年代です。
今後、年代を問わずキャリアの多重化が必要と言われたところで、子育てをしていれば子育てと仕事で精いっぱい、キャリアを多重化する活動に振り向ける余裕などないと思われる方も多いでしょう。
しかしキャリアを多重化するというのは、いま従事している仕事とは別の世界に飛び込んで、その世界を渡り歩く経験、能力を得ることであり、働きながらの子育ては立派な「キャリアの多重化」に繋がります。

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1 30代とは

30代というのは、一通りの仕事を覚え、指導なくして仕事ができる「一人前」扱いされるようになる年代です。
30代ともなれば社会に出て10年ほどが経過し、自分が生きていくために生業(なりわい)とする仕事も一応、定まってその道(仕事)に邁進します・・・というのは男性、それも一昔前の片働き世帯の男性の話。
昨今の30代、特に女性にとって30代というのは、子育てをするか否か、するなら仕事はどうするか、人生で精神的に最もしんどい時期だと思います。

30代は、ある日ふと親が老いたことに気が付き、自分自身も20代とは異なる疲れ方をすることに気が付いて「老い」を初めて実感する年代とはいえ、まだまだ頑張れてしまう力があります。

このように「頑張れてしまう」ために30代は、子育てしていれば、

邁進するぞ!と思う仕事は定まっているのに子育てに時間が取られて好き勝手に働けないことがもどかしく感じ、

子育てせずに仕事に邁進している場合は、子育てしなくてよいのかが気になるように思います。

2 「子供を産む/産まない」という問題

30代の女性が「子供を産むか産まないか」で悩むのは、女性は30代後半以降、出産できにくくなるといわれているためです。

私自身、32歳頃から子供を望んだものの5年ほど子供を授かることができず苦悩しました。
この経験から、どれだけ生殖医療が発達しても子供を産めるとは限らないことを学びました。
「子供を産む経験がしたい」と聞くことがありますが、その経験はいくら欲して努力しても必ずしもできるとは限らないことを私は知りました。

一方で「子供を育てる」という経験については、本気で欲して努力すればそれを経験する道を拓くことはできます。
私は養子を迎えることを検討したことがあり、今の日本社会で養子を育てることは簡単ではない実情を思い知らされました。
それでも、養子を迎えることも考えれば「子育て」はかなりの高確率で経験できると思っています。

「子供を産む」という経験は、どれだけ欲して努力しても経験しうるとは限りませんが、その経験は約1年で完結する、つまり期間限定ではっきりとした終わりもあります。

一方、「子供を育てる」という経験は本気で欲して努力すれば限りなく高い確率で経験できますが、はっきりとした終わりはなく期間も10年以上で原則として途中放棄は許されません。

戦後の日本社会は実子へのこだわりが強まり、「子供を産むこと」と「子供を育てること」とが一体化していますが、この2つは上述した通り全く異なっています。
30代になり、「子供を産むか否か」を考えるのであれば、この異なる2つの問題を分けてまず「子供を育てるか否か」について腹決めし、「子供を産むか否か」は「育てる」と覚悟した後に問う問題とするのがよいのではないでしょうか。

 

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3 子供の成長ステージと働き方

「子育てをするか否か」決断するためには、子育てがどのようなもので働き方にどのように影響するか知っておくに越したことがありません。
私は子育ての専門家ではないので専門的な話はできませんが、子育てに重きを置きながらもよい仕事をしたいと考える普通のワーカーとして思うところを書いてみます。

私の子供は上の子供が今、小2年生なので小学2年以降については未経験なのですが、昨年から1年間、主婦生活をしながら公園で遊ぶ子供たちを見て見えてきたのは、

①生まれてから2、3歳頃までの乳児期

②3,4歳頃から小学校入学までの幼児期

③小学校入学~10歳頃まで

④小学校4年頃から中学校卒業まで

⑤高校以降

という5つのステージです。
これら5つのステージは子供の成長ステージであり、ステージごとに子供とどのように関わるかが異なるように私は感じています。

まず①のステージですが、このステージの子供は喋るといっても片言であり、「人間」というより、可愛いけれどものすごく世話が必要な動物のように私には感じられました。
私は母から「子供が生まれた時、3年の辛抱だと思ってすべてを我慢した」と聞いており、このステージでは「3年の辛抱」だと割り切って自らの欲望の一切を断念にして無私無欲になり、目の前の「やるべきこと」をこなして何とか生き延びた感じでした。

このステージを過ぎて②のステージに入ると子供は意思や感情を表しておしゃべりもするようになり、私は人間として向き合う必要が出てきたと感じました。
②のステージ以降、子供は幼稚園や学校に通い出し「子供の世界」を作るようになります。
そのため、子供が子供の世界で過ごす時間内、親は「好きに働く」こともできます。
ただし②、③のステージの子供は「子供の世界」を持ちつつも親を絶対の存在としてまっすぐに親を求めますし、この時期の子供は今のご時世、一人で行動させるのは危険でしばしば親は子供に付き添うため、親の自由時間は依然として制約されると感じています。

④のステージに至って子供は親から遠ざかり始めるのですが、このステージでは子供は親が自分を見ているかを常に気にしているため、この時期ではまだ子供から離れるわけにはいかないように感じられるのではないかと思います。
私の感覚では親が子供から離れて子供を見ていればよいと子供が思えるようになるのは14,5歳頃からなのではないでしょうか。

子育ては、親を必要とする子供が存在するから必要なものであり、子供が絶対的に親を必要とする間、つまり最短でも③のステージまでは、働ける時間が多少なりとも制約されることは避けられないと思います。
つまり子育てすることを選択するということは、一定の制約のある働き方をすることになるということだと思います。

自由に動ける時間が限られる中で仕事をする場合、仕事をするために必要不可欠なコミュニケーション以外を割愛したり、参加義務のない集まりやセミナーから足が遠のいたりします。
そうすると、ネットなどでは得られない生の情報や人脈が得られず、業界動向にも疎くなります。
私自身、仕事の成果が働く時間の長短と全く関係ない仕事をしているのですが、たとえ成果が労働時間に左右されない仕事に従事していたとしても、働ける時間が限られることは働く上でのハンディになると思っています。

このハンディは働きながら子育てする人の多くが感じるようであり、会社員時代の復職後研修で、第1子の育児休暇から復職した30代前半の女性はみんな、働く時間が限られることの苦しさを語っていました。
特に子育ても仕事も大事と思う人は、このハンディを乗り越えようと無理をして睡眠時間を削ったり子供といても仕事のことが頭から離れない、となってしまったりするようです。
かくいう私もうっかりすると子供と一緒にいるのに仕事をして、無意識のうちに働く時間が限られるハンディから逃れようとしてしまいます。

4 2035年に向けて30代をどう乗り切るか

このように子供を抱えていると自分のために使える時間がほとんどなくなり、子育てと仕事以外のさらに別のことをするのはほとんど不可能です。
となると、子育てしながら働く人はキャリアを多重化できないのかといえばそんなことはないと考えています。

子供を育てるということは、大人には必要ないけれど子供には必要な様々なモノやコト、環境を整備するタスクを背負うことです。
企業人としての感覚を保持してこのタスクを遂行すると、子育てに関する様々な社会課題が見えてきて、子供を育てない限りは必要のないモノやサービスの必要性に気が付きます。
つまり子育てすることで、商品/サービスを提供する企業の立場ではなく、子供が生れ育ち生きるために必要な商品やサービスを求める生活者として、経済社会や企業活動を見ることができます。

このように異なる視点を持つこと、経済合理性や効率優先で動く仕事の世界とは全く別の世界に入ること、

その中で仕事の世界では出会わないほど考え方や振る舞いが違う人と会話し、

時にはPTAなどの活動をご一緒することはまさに、

自分自身をリセットして別の自分を創造する「キャリア多重化」に他なりません。

ちなみに私は子育てをし、その利点を感じてはいますが、だからといって子育てすることを勧める気はありません。
友人の母の言葉ですが「子供がいてると喜びもあるけど、心配せなあかん。子供がおらんのは寂しいけど、心配せんでいいから、子供がおんのがいいとも限らん」という言葉が実に的を得ていると思っています。
世の中で人々がどちらにすべきか悩む選択肢には必ず長短両方があり、「子育てする/しない」もその例外ではなく、どちらにもメリットとデメリットとがあり、どちらがいいかは各人それぞれが判断することだと私は思っています。

いずれにせよ、子育てするかしないかを腹決めしたのであれば、子育てをするにしてもしないにしても「これでいいのか」と悩む必要はないと思います。
子育てをしていないのであればその身軽さを活かして本業にいそしむ傍ら、社外に出て学び直しをしたりプロボノなどの活動に参加したりして、会社に頼らず20年後を生き抜くための人脈や経験を得ればよいのです。
子育てしていれば、子育てする生活者として見える世界を存分に探究して「企業人であり生活者でもある」という複眼を獲得することで、子育てする場合に不可避な「自由に動ける時間が限られる」というデメリットを相殺すればよいのです。
「保護者」という立場で遂行する子育てというタスクは、組織の中で割り当てられるタスクに比べて自分の自由度も責任も大きく、「自分事」として真剣勝負を余儀なくされます。
仕事とは全く違う世界で「自分事」として背負う「親の務め」を果たすことは、仕事とは別の活動に従事する「キャリア多重化」にほかなりません。

私自身、チャレンジに踏み切りにくい40代であるにもかかわらず、子育て中であるからこそできるチャレンジをしています。
そのチャレンジは苦しくはありますがそれ以上に気付き学びが多く、キャリアの多重化になっていると実感しています。
ですから30代のあなたがいま子育てに時間を割き、仕事に打ち込めないと感じているなら、それはまたとない「キャリア多重化」の時間なのだと割り切れることを応援しています。