Woo!(ウー)

働き方改革企業の社長に編集長が突撃取材!〜チャットワーク 山本敏行さん〜

働く女性の皆さんこんにちは。毎回大好評の、女性が活躍するベンチャー企業の社長インタビュー。今回のゲストは、ChatWork株式会社の山本敏行社長。社員第一主義を掲げた独自の経営スタイルが特徴で、「電話がない、10連休が年3回」などユニークな働き方をする会社として知られており、社員満足度調査で日本一を2年連続獲得する実績を持ち、多くのメディアに取りあげられています。そんなChatWorkは今、「世界の働き方を変える」という壮大なミッションを掲げ、次のステージへ大きく舵をきりました。まだ36歳という若さにして、会社経営は16年目を迎えるという創業者、山本社長にお話を伺いました。

1.「働き方」を意識するきっかけは、会社設立前の経験にあった。

ー山本:思えば常に『一度に2つ以上のことに取組み、どちらもうまくやれるよう工夫する人生』を歩んできました。

僕は2000年、大学生の頃に創業しましたが、2002年から2004年の2年間は父の会社でも働いていました。つまり自分の会社にかける時間が半分しかなかったので、必然的に効率よく働くしかなかい状況でした。

ー高野:なぜ、ご自身で創業されたにもかかわらず、お父さんの会社でも働かれていたんですか?

ー山本:父は、大阪の吹田で、結構人気がある音楽スタジオを経営しているのですが、当時父からは「自分でビジネスをやるにしても、絶対社員は雇うな!」と言われていました。「もし人を雇ったとして、おまえは社員の人生まで責任とれるんか」と。なにせまだ僕は大学生でしたしね。ですから、父の音楽スタジオでドラムのメンテナンスをしたり、レジ打ちをしたり、スピーカーを直したりしながら、一方で自社を運営していくという日々でした。

ただ当時は、月末が忙しいビジネスモデルだったので、毎月月末は徹夜で対応していました。「さすがにこの状況は何とかしたい」と思い、父に思い切って「僕は自分の会社一本でやっていきたいんだ!」と思いを伝えたところ、「分かった、この音楽スタジオの隣でなら、やってもええ。」と言ってもらい、会社を設立しました。それが2004年です。

ー高野:ひとり暮らしをしたくて両親を説得したら「家の近くでならひとり暮らししてもいいよ。」というOKをもらった感じと似ていますね。

ー山本:本当にそんな感じです。「隣にいるし、だめになったらまた戻ってくるだろう」と思っていたんでしょうね。

父も会社を経営してきて経営の大変さを身にしみて感じていたはずなので、息子が心配だったんだと思います。

会社を設立した翌年から1年間ある研修会社の「経営者養成研修」に参加しました。僕は会社に勤めたりマネジメントした経験もなかったので、経営者としてしっかり勉強しようと思ったからです。

するとこれが結構大変で…1年365日のうち1/3は研修というハードなものでした。なんとか研修も会社もしっかりやろうと工夫してやっていましたが、研修に行き始めて3ヶ月目の頃、「もうこれはどう考えても無理だ」と気づきました。お客様はどんどん増えているのに、当時社員は5人しかいない。そして僕は研修でほとんど会社にいない。じゃあ、弟に会社に入ってもらうしかない!と思いました。

ー高野:なるほど!ここで、弟さんで現在CTOの山本正喜さんが参画されるんですね。

ー山本:はい。弟には、学生時代から会社のシステムを作ってもらっていたので、当然そのままうちに入社すると思っていたら「3年はよそで働いてみたい」ということで、就職して1年が経つ頃でした。そこで社員全員で「まさきさ〜ん!戻ってきてくださ〜い!」「まさきさんの力がないと死ぬ〜!」とかいう音声を撮って、それを弟に送りつけました!すると、働いていた会社を3月に辞めて、4月に当社に入社してくれました。

後から聞くと「あんな音声送られたら戻らなしゃぁないやん」ともらしていました。(笑)

ー高野:メールや手紙ではなく、音声というところがさすがChatWorkさんですね。よく兄弟で仕事をすると喧嘩してうまくいかないとお聞きするのですが、そんなことはありませんか?

ー山本:それはありませんねー。インタビューなのでいい格好しているのではなく、本当に無いんです。それは「得意分野が全く違うから」だと思います。僕は外交、ビジネス、アイデア系に強いですが、弟は、システム系でエンジニアです。お互いに無いもの持っているので「僕が出来ないことをお前はできる」と尊重し合えているのだと思います。

また、弟は「マネジメントの大切さをわかっているエンジニア」です。両方を併せ持っている人はとてもレア。技術者でありながら、経営の話ができるのは大きいですね。

ー高野:なるほど!素敵ですね。お互い無いものを持っていて尊重し合える、かつ経営の話ができる相棒、まさに鬼に金棒ですね!

ー山本:本当にありがたい事ですね。

ー高野:働き方を効率よくするというお話に戻るのですが、弟さんが入社されてからもずっと働き方の効率化は意識されていたのですか?

ー山本:はい。例えば、無理に営業しても売上に繋がらなければその時間は無駄なので、プッシュ営業は絶対にしないとか、主婦の方にチャット上で顧客対応の仕事をして頂いて、その分社員は創造的なことに頭を使うとか、電話をひいていると営業電話が結構かかってきて、その対応に時間がとられるから電話は廃止!とか…。

「随分思い切るね」と周りからは言われましたが、どうすれば今の状況をより効率よくできるか考える事で、社員さんも楽しく働けるサイクルが生まれていたので、当社にとってはごく当たり前なことでした。一度に2つのことに取組むという意味では、現在もそうですね。シリコンバレーに進出しながら、日本のマネジメントも見ているので。

『一箇所に全神経を注げないけれど、どちらも100%にやりたい。じゃあどうやったらうまく両立できるか』を真剣に考えて一つ一つ変えていきました。

そのためには僕が日本にいなくても会社が問題なくまわる必要があるので、以前にも増して権限委譲するようになり社内が強くなりましたし、他にもプラスの効果がたくさんありました。

2.山本社長の少年時代と経営戦略

ー高野:お話をお聞きしていると、山本社長は常に難しいことにチャレンジされていると思います。常に、あえて難しい道を選ばれるのはなぜですか?

ー山本:僕は、一つのことに専念することが苦手ですよ。一つのことに専念したところで、一点集中で極めている人にはどれだけやっても敵わないし、大手企業に参入されたら一瞬でもっていかれてしまいます。だったらみんながする競争率が高いフィールドではなく「自分たちが勝てるフィールドで戦おうよ」という考えです。

となると、「必然的に誰もやっていないことをやる」という選択肢になる。

・難しいといわれる「社員満足」と「ユーザー満足」を両立させること
・みながメールを使っている時代にチャットサービスを始めること
・日本からシリコンバレー、世界へ挑戦すること

全部そうですね。

ただ、誰もやっていないということは、その分大変です。市場がまだ無いところから作り出さないといけなかったり、ノウハウが十分に無かったりして、乗り越える壁もはるかに高く大きい。でも、そこを一歩ずつ登っていくことで自分たちが得たノウハウには大きな価値が出ますし、世間から注目され、評価もされていく。

そして、誰もやっていないことに最初から取り組み、実績やノウハウを積んでいるから、たとえ後から入ってこられても、勝てるわけです。結果的にそれが「いつもチャレンジしている」という姿にうつるのだと思います。

ー高野:なるほど!山本社長は、子どものころからそのような考え方だったのでしょうか?それとも、会社を立ち上げられてからでしょうか?

ー山本:子どもの頃からですね。小学校の頃から『僕は何か人と違うことをしたい』と思っていました。当時みんなが読んでいた流行りの漫画も、僕は絶対に読まなかったです(笑)。

ー高野:私は山本社長と同世代ですが、当時はガンダム聖闘士星矢なんかは流行りましたよね!男子はみんな話題にしていたように思います。ということは、学校でも話についていけないですよね…笑

ー山本:そうそう、その通りです。学校でも全然話についていけないんですよ。さっぱりわからん。それでも一切見ませんでした(笑)。だってみんな見てるんなら、僕は見なくていいし、僕が見たところで、めちゃくちゃ好きで毎回欠かさず見てるやつには敵わないですしね。天邪鬼ですよね。

ー高野:確かに天邪鬼ですね…でも、天邪鬼なイメージは山本社長にはなく、逆にクリーンなイメージしかありません。これは戦略でしょうか?

ー山本:ありがとうございます。実は今までに100人に言って100人ともに共感されなかった「卵の殻戦略」についてお話しても良いですか?生卵の中身は液体ですから、殻がなければ中身は外に流れてしまいます。殻があるから成り立っているわけです。でも茹でることで中身が固まり、殻を破っても綺麗なゆで卵ができているわけです。

人間も同じで、創業当初は、やったことない仕事でも「できます!」と引き受けて、必死で勉強してスキルをつけて、お客様に最大限満足していただける仕事で返す。その繰り返しで成長していくものですよね。

いつも実際の自分より少し大きい自分を演出し、パッケージングして、殻があるうちに一生懸命自分を成長させてそこに追いつくことを繰り返すことで人は成長するというのが、「卵の殻戦略」です。

ー高野:すごく分かるんですが、ネーミングは「卵の殻戦略」でなくても良いような…でも、納得です!

ー山本:僕は根本的に『人を驚かせることが大好き』です。普通にやるのは物足りないし面白くない。「あれ、山本さん、次はこんなことするの!?」「え、ChatWorkさん、こんなことするの!?」という周囲の喜ぶ顔を見るのが大好きなので、これからも人がやらないことにチャレンジし続けていきたいですね。

次のページ>>> 仕事と家庭の両立は、まずはトップである山本社長自ら実践する!幼稚園の送り迎えや…

3.仕事も家庭も、どちらも大切だから、両立できるよう工夫しよう。

ー高野:山本社長が、新しいことや誰もやらないことに取り組まれるというそのアイデアは、どこからくるんでしょうか?

ー山本:自分の経験からですね。例えば5年前「メールの時代は終わりました」というキャッチフレーズでチャットワークをリリースしましたが、2002年頃からずっとチャットで仕事してきた当社にとって「チャットで仕事する」ことはごく当たり前でした。逆に「便利で効率良くなるのに、なんでみんな使わないんだろう」と思っていました。

ただ、はやく打ち出せばいいというものではありません。

早過ぎれば世間には全く受け入れられませんし、普及しはじめてからでは遅い。その絶妙なタイミングを見極めるのが、経営者の大事な仕事だと思っています。

ー高野:勉強になります!では話は少し変わりますが、現在2児のパパでもある山本社長ですが、お子さんが産まれてから経営や考え方に変化はありましたか?

ー山本:ありましたね。子育てがこんなに大変だとは思っていませんでした。仕事で大人とやりとりするほうが断然楽です(笑)なぜなら言葉も分かるし理屈が通じますから。子どもに理屈は通じませんから本当にに大変ですね。自分が子どもを持ってみてはじめて、世の中の母親全員を尊敬するようになりました。ほんとにすごいな〜と。

とはいえ、育児を積極的にするようになったのは、シリコンバレーに来てからです。日本にいた頃は、毎日のように会食があり、IT飲み会で全国に出張していたので、子どもの面倒を見るのは休日しかありませんでした。

でも、妻と生後半年の娘にも一緒にシリコンバレーについてきてもらったことで、妻は家事や育児で頼れる人が周りに誰もいない状況になりました。そこでさすがに「僕も一緒に家事や育児もちゃんとやらなあかん!」と思うようになりました。

普段は、娘の幼稚園のお迎えにもいきます。アメリカは、家に帰って家族と晩ご飯を食べるのが普通なので、僕も夜は家族とご飯を食べますし、率先して食器洗いもします(笑)

そんな日々を過ごすうちに、育児と仕事は全く別物ではなく、両方に良い効果をもたらすこともわかってきました。

以前、娘の友達のバースデーパーティーへ行った時のこと。パーティーに来ていた人と話していたら、Google、Apple等、知っている会社で働いてる人ばかりでした。そこでチャットワークの話をしたら「私の会社で使っているチャットサービスが信じられないくらい使いにくいから乗り換えたい!」「うちの会社の顧客にもチャットワーク提案するよ」という話にまでなりました。

ー高野:おぉ…。さすがシリコンバレーですね。

ー山本:仕事一筋もいいですが、世の中にはたくさんの世界があり、それらが自分の仕事に活きたり、人としての幅を広げてくれることになります。「仕事も家庭もうまくやるなんて大変」という考え方もありますが、どちらも素晴らしいものなので、うまくやる方法を考えたいですよね。工夫すれば、やれないことはないですから。

そして何よりも、一番身近な家族が幸せであることが大切です。家族が応援してくれるから仕事も頑張れますし、家族を大事にするのは当たり前です。先日弟夫婦にも子どもが産まれ、弟も出産に立ち会いましたが、当社の『出産立ち会い制度』を使って出産予定日前後は在宅勤務をしていました。また実家へ帰省する費用を会社が一部補助する『ゴーホーム制度というものもあります。
僕は会社を「どうせ無理」ではなく「やったらできるかも」という風土にしていきたい。30年前は不可能だったけれど、今はネットが普及していて可能になることはたくさんあります。

おかげ様で、当社で働く女性はほんとにパワーがあります!中には「そのへんの男性より男前」というほど、ガンガン頑張ってくれている女性も…(笑)心強いですね。

4.EC studio時代の方針を変えてまで、大きく舵をきった理由。

ー高野:ChatWorkに社名変更される以前のEC studio時代には、『上場しない』『規模を大きくしない』『社員は40人以上にしない』等の『しないこと14ヵ条』を作っておられましたが、昨年あたりからその方針を変更し、大きく舵をきっておられます。創業以来大切にしてこられた方針を変えられたのはなぜなのでしょうか?

ー山本:はい。『今の自分にしかできないチャレンジをしたい』と思ったからです。会社を興して10年ほど経った頃、ふと、このままいいのかなと思うようになりました。

・僕がいなくても会社は問題なく回っている
・ストック型で毎年業績が上がるビジネスモデルがある
・そして僕は、講演や書籍出版の依頼が増えてアウトプットばかりしている

…僕は30代前半でまだ若いのに、このままじゃだめだ、もっと経営者としてステップアップしたい!と思いました。その時、3つの選択肢を考えました。

・新しい会社を作るか
・大企業の社長になって日本の会社を経営するか
・グローバル展開をするか

今すでに会社があるのに新しい会社を作るのはおかしいし、大企業の社長なんて、30歳そこそこで中小企業の経営しかしたことない僕に依頼がくるわけがありません。最後のグローバル展開は、もともと視野にいれていたことだったので、グローバル展開にチャレンジしよう!と決めました。

自己資本で、GoogleやFacebookと戦うのは、たまらなく面白いことだとワクワクしたんです。

ただ、シリコンバレーに行ってチャレンジする中で、自己資本で世界と戦う限界を痛感するようになりました。当社より後から出てきた会社が、資本をいれてぐんぐん伸びていく姿をシリコンバレーで目の当たりにしつつも、自分たちは大きく動けないもどかしさを感じていました。

そしてある日、役員に相談してみました。「資本をいれて、大きくチャレンジしたほうがいいと思うんやけど、どうやろう?」と。すると「はい、それがいいと思います。僕たちだいぶ前からそう思ってました!」という答えが返ってきました。「え!そうやったん!?」と拍子抜けしてしまいました(笑)

それまで実は社名はEC studioで様々なサービスがあったのですが、それ以降社名をChatWorkに変更し、全てをチャットワーク事業一本に絞り、大きく舵をきりました。

ー高野:すごい意思決定ですね!新たなチャレンジの幕開けなのですね。

ー山本:今後の当社の大きなチャレンジは、もちろんチャットワークを世界に広げていくことですが、同時に「社員満足」「ユーザー満足」「株主満足」のトライアングルを成り立たせることです。今までの当社は「社員満足」と「ユーザー満足」の2つをとても大切にしてきました。そこに「株主満足」が加わると、たいていは何かを捨てないといけないと言われます。

でも、このトライアングルは相反しないと思っています。むしろ、その中でも一番難しい「社員満足」に取り組んできた仕組み、風土という土台がある僕たちは、とても強い。

ー高野:すごいですね!お話をお聞きしているだけでワクワクします!その中で昨年から今年にかけて、社員数が倍になられたんですね。

ー山本:はい。ただ、一気に社員数が倍になったとはいえ、一人ひとり丁寧に採用をしています。

『仕事を通して自分の人生を良くしたい人』
『世界中の働き方を変える!というミッションに一緒にチャレンジしてくれる人』
『より良い人生のためにあくなき追求をしていく人』

こんな方々と一緒に、僕たちはこれから大きなチャレンジをしていきたい。

未来の自分を喜ばせてあげられるのは、今の自分しかいません。今僕はすごく幸せですが、それは過去の自分が頑張ってきたお陰です。つまり、3〜40年後の自分がハッピーであるためには、今頑張らないといけません。そうやって常に人生にチャレンジし続けていく姿勢はとても大切だと思っています。

ネットが進化し、みなが自由にチャレンジできる。こんな恵まれた面白い時代はありません。もしかしたらChatWorkが、数年後にはGoogleみたいになっている可能性もゼロじゃない。だったら、たとえ大きな目標だったとしても、そこにとことん、チャレンジしていきたいですね!

驚くほど熱い情熱を持っているのに、暑苦しさを微塵も感じさせない爽やかな山本社長。ご多忙中にも関わらず『目の前にいる人に喜んで頂くことが大事ですから』と、時間めいっぱいにたくさんお話をして下さいました。また、シリコンバレーと日本を行き来しながらも、ご家族を大切にされている姿は、本当に尊敬します。大きなことを成し遂げる人ほど、目の前の小さなことを大切にする。それをまさに体現されている山本社長から、今後も目が離せません!

ChatWork株式会社について

設立:2004年11月11日(創業 : 2000年7月15日)

事業内容:チャットワーク事業(チャットワーク) ソフトウェア販売事業(ESETセキュリティソフト)

大阪本社:〒564-0032 大阪府吹田市内本町 2-21-8

代表者:山本 敏行(やまもと としゆき)

*ChatWorkは現在共に働く仲間を絶賛募集中!採用ページはこちら