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20年後の社会と働き方改革〜vol.1 「働き方の未来2035」って何?

働く女性の皆さんこんにちは。「転石 ビジネスサークル」代表の小野 曜(よう)

「働き方の未来2035」(以下「未来2035」)とは、2016年8月に厚生労働省が公開した報告書です。「未来2035」では、約20年後の2035年には「働き手は働く時間や場所を自分で選び、企業はプロジェクトごとに働き手を求めるようになり、兼業や副業は当たり前となっている」と予測しています。

人生90年時代、Woo!の読者の多くは2035年、何らかの仕事をしているのではないかと思います。そこで2017年の年初、「未来2035」の概要を紹介し、「未来2035」が描く未来は現実のものとなるのかどうか、私見を書いてみたいと思います。

1 働き方の未来2035」が描く20年後

「未来2035」では「2.2035年の社会」で2035年まで生産年齢人口(15歳以上65歳以下)つまり労働人口が減るものの、情報処理技術や移動技術の技術革新によって、2017年現在、働きたいけれど働けない人が働けるようになるほか、いま現在必要とされている「働き手」の一部は必要とされなくなると書いています。

どのような「働き手」が必要とされなくなるのか。「未来2035」は「専門的な知識を必要とするものの定型的な業務である仕事」「認識や動作の習熟を必要とするものの大域的な判断を必要としないような仕事」が機械(コンピュータ)に代替される可能性が高いとしています。つまり、ある程度の専門知識なり経験なりを積んで仕事を覚えてしまえばルーチンワークとしてできる仕事はコンピュータにより代替されうる、というわけです。

このようにいま人間が従事している仕事がなくなる一方で、「未来2035」は新しく「働き手」を求める仕事も出現してくるはず、と述べます。新しく働き手を求める仕事としては、人間の感性や個人的な感覚に左右される価値評価(例えば面白いか、楽しいか、など)が必要な仕事や、付加価値の高い(つまり高級な)接客、起業・事業創造が挙げられています。

また「未来2035」は、「2035年には、各個人が、自分の意思で働く場所と時間を選べる時代」に変化している事が重要、と書いています。「インターネットやモバイルがなかった時代には、多くの人が同じ部屋に同時に集まり、一緒に仕事をしなければ、ほとんどの作業が進まなかった。しかし、今や(中略)異なる空間にいても(中略)必ずしも同時刻に作業をしなくても」共同作業はでき、働く時間や場所に縛られる必要はない、というわけです。

このようにルーチンワークはコンピュータに代替され、人間が必要とされる仕事を担う働き手は働く時間や場所を自由に選ぶようになる。その中で、「企業は、極端にいえば、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊」となる、と「未来2035」は予測します。そして企業がプロジェクトの塊になるにつれ、企業はプロジェクト単位で働き手を求めるようになり、「企業組織が人を抱え込む『正社員』のようなスタイルは変化を迫られる」と述べています。
そして「働き手」もまた、企業に所属するのではなくプロジェクトに従事するようになり、プロジェクトが終了すれば別の企業で別のプロジェクトに従事するようになり、「兼業や副業、あるいは複業は当たり前のこととなる」と予想しています。

 

2 新しい働き方」はすでに創られ始めている!

「働き方改革」は、安倍政権が掲げる最重要課題の一つであり、2016年はとりわけ「働き方改革」や「新しい働き方」創造の必要性が喧伝された年であったように思います。

私見ですが、2000年代以降、特に2008年頃の20~30代の若手起業家 の登場とともに「新しい働き方」が創造されるようになっており、少なくとも首都圏では2012年頃から若手起業家以外にも「新しい働き方」 が広がってきています。なおここで言う「新しい働き方」とは、自分がどのように働くかという決定権が自分自身にある、という働き方です。

2008年頃に「新しい働き方」を創造していたのは、20~30代の若手起業家であり世間で注目を集める特別に元気で能力がある「有名人」でした。しかし2012年頃から新しい働き方を創造し始めたのは、有能だけれども有名でもない30~40代の普通のサラリーマンであり、私の周りにいて普通に付き合ってきた友人知人でした。

最近では、働き方が縛られる企業勤めを辞めて自由に働きたい個人(例えば子育て中の元キャリアウーマン)と、働く時間や場所に制限はあるけれど優秀な人材を求める企業とをつなぐサービスを提供する会社も登場しています。この会社はWarisという2013年設立の会社で、この会社に人材登録している「自由に働きたい個人」はすでに3000人を超えているそうです。

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3 「働き方の未来2035」は当たる?

私は2015年1月に東京から大阪に転居しているのですが、首都圏ほどは雇用の流動化が進んでいない大阪にいると「未来2035」は現実を知らない政府がありそうもない未来を語っているようにも見えます。しかし少なくとも首都圏では「未来2035」に描かれている世界の一部はすでに現実化しているものです。となると、「未来2035」はありそうもない未来を描いているのではなく、いま現在一部で現に起こっている現象が将来、拡大すると予想しているように見えます。

もっとも「未来2035」が描く、「自分の意思で働く場所と時間を選び、プロジェクトごとに企業を渡り歩く」ような働き方ができるのは、自分を売り込めるだけ能力、経験、何よりも自信か度胸、少なくとも一定の覚悟が必要で、誰もができるようになることではないでしょう。ですから、私は2035年の社会で多くの人が「未来2035」が描く働き方をしているかというと、そうでもないだろうと考えます。

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ただし企業は、規模が大きい企業ほど、「定型業務をこなす正社員」を減らして「プロジェクトの塊」に変化する傾向を強めると考えます。規模が大きい企業ほど定型業務が多く存在し、これらの定型業務はマニュアル化されているがゆえにコンピュータ(AI)で代替しやすく、また、定型業務に従事する人も多いことからAIで代替するメリットも大きいためです。

このため今より多くの人が「組織に頼らず稼ぐ」必要性に迫られるのは間違いないと思います。2016年、「副業」を認める企業が注目され、政府も正社員の副業を後押しする姿勢に転換する のは、「一つの所属先に定年まで勤める」これまでの働き方が今後、間違いなく修正されていくことに備える必要があると企業や政府が考えているからでしょう。

 

4 これから起こるかもしれない変化への対応

 

こうした「働き方を巡る変化」を察知している人はすでに「一つの所属先に頼らず稼ぐ」ことができるよう、動き始めています。

「雇ってもらって決められた場所で決められた時間、決められた仕事をやればお給料がもらえる」ことに安住して今の所属先に閉じこもり続けるのか、所属組織を離れて稼げるように動くのか。

それは、20年後の社会、そこでの働き方がどのようなものであると考えるかによって異なるでしょう。

20年後、「未来2035」が描くような変化が起こっている場合に備え、「所属組織を離れて稼げるように備えたい」と考える人は首都圏や若手を中心に増えています。

とはいえ、多くの人は「所属組織を離れて稼げるように備える」ために何をすればよいかもわからないというのが現状ではないかと思います。

そこで「転石 ビジネスサークル」は、これからしばらく、「マルチキャリア開発」をキーワードに、20年後の社会、そこでの働き方がどうなるか、そのためにどうするか、を考える場としていく予定です。
ご関心ある方はご参加いただければ幸いです。

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