いきなりだが、「女社長」に対する世間のイメージは、結構固定化されているように思う。
1 女社長と聞いて、どんなことをイメージする?
女社長と言うと…
・バリバリガンガンのスーパーウーマン
・めっちゃ怖い
・全国飛び回ってる
・子どもはベビーシッターに預けて仕事三昧
・家事はほぼ外注
・とにかく超人
私も、いわゆる女社長だが、20代(27歳)で独立したということもあって、余計に「バリバリ」なイメージを持たれることが多い。
でもそれはある意味仕方がないことだと思う。
人は何かとレッテルをはってしまう生き物だから。
アメリカ人は、毎日ピザ食べてるんでしょ?
インド人って、毎日カレー食べるんやんね?
(本当にそうかもしれないけど)
的な感じと一緒、多分。
でも、世間の方が持つ私のイメージが、実際のものとは随分かけ離れていることを先日知ったので、「本当は私こんな人なんです」ということをちらっと書いておこうかなと思う。
(誰が興味あんねん…)
—
今の私は、バリキャリ志向ではなく、
「できれば楽したいし、会社は大きくしないし、事務所もいらないし、ゆるくガッツリ稼げる方法を見出したい」と思っている女社長だ。
社員を増やし会社を大きくしながらも、ゆるくガッツリ稼ぎ休みをしっかり取れるという会社の運営方法もあるとは思うが、
少なくとも、今の私の器と会社の状況では無理だ。
だったら潔くそこは諦めて、背伸びせず、
自分の能力にあった範囲内でやっていこうというのが今の私の考え方。
かといって「ゆるく起業しましたー」とか、「セレブなライフスタイルしてまーす」というのをウリにしている、最近流行りのキラキラ系女社長とは、頼むから、一緒にせんでくれとも思っている。
私は起業に対しては真剣なので(その人達も真剣だろうけど)、ゆるゆるではなく、
かといってバリバリでもない。
そして育児は、自分の手で結構やりたい派。
何かを捨てて何かを選ぶのではなくて、自分が大事なものどれもを、うまい具合に手に入れたいという、わがままな感じが、今の私なのだと思う。
2 180度違う状況で走り抜けたからこそ、気づいたことがある
今はこんな風に思っているが、以前はまるで違った。
…というか、真逆だった。
私はこうみえて(ってどうみえてるんだろう)
「周りからできるやつだと思われたい」という意識がかなり強い。
逆に言うと「あいつはできないやつ」と思われる状況は、想像しただけで恐ろしく、多分、死んでしまいたくなるくらい辛い。
だから、常に周囲の期待には全力で応え、周囲が驚くことをしたいという気持ちで生きてきた。(今は、以前よりはだいぶマシにになったとはいえ、全くこの意識が無いわけではない。)
そうすることで、自分を追い詰め過ぎて苦しくなったり、「優等生であらねば」と気持ちの行き場がなくなり逃げ出したくなることがあっても、「できないやつ」と思われるよりは何百倍もマシ。
まぁ、20代で起業したという時点で、「わー起業したの!?すごいね!」と周りから思われたい感丸出しやわな。
だから自分の中では、
・常に上を目指すこと(現状で満足しない)
・成長速度やスピードを緩めないこと
が、いわば強迫観念のようになっていた。
そして30歳になる頃。
知り合いの女社長が、立て続けに出産した時期があり、当時お世話になっていた男性の社長がこうおっしゃっていた。
「あいつ、出産するまではバリバリやってたのに、出産した途端ころっと変わったよな。フェイスブックも子供の写真ばっかりやし、会社よりも育児のほうが大事らしい。もったいないよなーあんなにガッツあったのに。でも女性ってそういうとこ結構あるよな。」
…そんなこと私に普通に言ってますが、目の前にいる私も女性ですけど…
という指摘はさておき(そのくらい女として見られてなかったし、むしろ女の部分を出すまいと意識していた)
その男性社長も悪気があって言っているわけではなく、言ったことも忘れているくらいだと思う。
でもその言葉が、当時の私の心にぐさっとつき刺さった。
「そんな風に思われるなら、私は子どもを産んでも、絶対そうはならん。仕事に生きる姿勢は変えない。」
だから長女を出産した時は、実際1ヶ月で仕事復帰したし、なんなら出産した日に徹夜で電子出版出版した。(完全に自分のスケジュール管理ミスなのだが。そして出産と出版は絶対同日にやるべきではないという大事な教訓を得た)
もちろん、出産をきっかけに、無駄を捨てて効率よく働いたり、ITツールをフル活用するなど働き方を大きく変えてきたが、それでもかなりの時間働いていたことは事実だ。
・保育園のお迎えがあるので残業はしないけど、土日はずっとパソコン
・泊まりの出張はしないけど、子どもが寝たらずっとパソコン
・家族の旅行にももちろんパソコンは持参
という感じ。
夜中の授乳で毎日睡眠不足、そして育児に、家事に、仕事に…
常に頭は休むことがなかったので、
連休になると決まって体調を崩し、
家族で温泉旅行に行くと必ず熱を出し、
1人でいるとき、急に涙が止まらなくなったり、
挙句の果てにはパソコンを開けたら吐き気、仕事のことを考えると頭痛がする状況にまでなった。
完全に限界だった。
それでも、それでも、必死で働き続けた。
もちろん、仕事が面白く、やりがいがあるというのもあったが、「あいつ、出産前まではガッツあったのに、出産したらあかんわ。」と思われたくないという強迫観念がかなりあった。
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3 何かが崩れた瞬間。
そんなある日、知り合いの社長がこんなことをおっしゃった。
「この前、仕事でイタリアに行ったんですよ。イタリア人って結構適当な人が多くて、約束の時間には平気で遅れてくるし、すぐ休憩するし、バカンスも2ヶ月とか普通にとりますよね。それなのに、一人あたりのGDPは、休み返上で必死で働く日本とほぼ変わらないんですよ。やってらんないっすよねー。」
その話を聞いた時、私の中で何かが音を立てて崩れるのを感じた。(実際は音なんてたってないけどな、骨が崩れたわけでもあるまいし。でもそれくらいの衝撃だったということ)
ほんとだ、たしかに、やってらんねー。
なにやってるんだろう私。
今まではイタリア人をどこかで「あの適当民族たち」と小馬鹿にしていた。どうせ彼らが作る高級車は、見た目が派手なだけですぐ壊れるだろ?とか。
でも、周りがどう思おうが、なんと言おうが、そこそこのGDPを稼ぎ、本人たちは人生を楽しんでいるわけだ。
それってすごく素敵なことじゃないか。
じゃあいったい私は何のためにこんなに必死に頑張ってるんだろう。
自分のため?
家族のため?
仲間のため?
もちろんそれもある。
でも、でも、見ないようにしていたけれど、やっぱり、「周りからすごいと思われたいから」という部分は大きかった。
女社長ってすごいね。
育児も経営も両立するってすごいね。
と。
では、今私が一番したいことは何だろう。
周りからどう思われるかは関係なく、本当にやりたいことはなんだろう。
と考えた時、出てきたのは「娘との時間を持つこと」だった。
子どもたちと向き合いたいし、自分自身もゆっくりしたい。余裕を持った状態で子どもたちに接することが出来たら、きっと子どもたちにとってもいいんだろうな。
そしてだ。
私は、小さな会社の社長という立場なので、これが出来る状況にある。
私が「やる!」と言えば、すぐに出来る状況にある。
じゃあ、やろう。
認可外保育園に通っていた長女を、3歳を機に認可保育園保育園に転園させようと思っていたけど、ちょうど枠が全く無いといわれたから、インターナショナルスクールの幼稚園に預けることにしよう。
そのかわり、毎日14時に送り迎えに行かないといけないし、毎日朝はお弁当を作らないといけないけど、娘には園の雰囲気はあってそうだし、それでいいか。
次女は、1歳なるまでは、焦って保育園あずけないでいいかな。今しか一緒にいれないし。
とはいえ、このような状況でも稼ぐには、仕組みが要る。
自分が動かなくても、お金が入ってくる仕組みが。
じゃあ収益源を講演や研修だけに頼るのではなく、真剣にサービスを作ろう。
そしてフェイスブックにも「イタリア人のようにゆるくガッツリ稼ぐ働き方に変える」と宣言しよう。
4 実際はどうか?
気づけば、フェイスブックにそう宣言してもうすぐ1年がたつ。
そして今思うことは「なんでもっとはやくこうしなかったんだろう」ということ。
もちろん、もし私が独身だったり、独立したてだったら、とてもこんな決断はできないから、絶妙なタイミングだったとは思う。
でも、周囲の人は自分が思ってるより私のことを見てないし、気にしてない。みんなにも自分の人生や生活があるわけだから、実際はみんな自分のことで必死だ。
仮に「あいつはなぁ…」と思われたところで、それが自分の人生に微塵も影響しないこともわかった。
そしてもう一つ改めて大きく感じたこと。
それは、「私は仕事が大好きだ」ということ。
少し仕事と距離を置いたことで、仕事は自分の人生にとってかけがえの無い大切なものだということがよくわかった。
楽しいし、生きがいだし、仕事は、私の人生そのものなのだ。
ときには辛いこともあるけど、乗り越えた時の達成感や喜びは計り知れない。成長した分だけ自分を好きになれる。人生っていいなって思える。
これは仕事からしか味わえない醍醐味だと思う。
「だからどんな状況になっても、私は一生、死ぬまで、仕事を続けるだろう」と確信するようになった。
そして今は、状況の小回りがきくように、
会社は大きくしない、社員は増やさない。売上より利益重視で行く。
だけど、決して仕事や会社運営を適当にやっているわけじゃないし、来年からスタートさせるサービスを絶対成功させる決意は固い。
でも必死で働くのではなく、頭脳戦で、時には流れに身を任せながら、成功させる。
以前の私なら、今の私を見て、「はぁ?甘ったれてんじゃねぇ!」と言っただろうし、
まさか自分がこんな風になるとは思っていなかった。
ほんと、人は変わるんだな。
今は、女性活躍が時流で、女性社長や働く女性のロールモデルといえば、バリキャリで、家族とも円満で、子どももすくすく育って、超完璧な感じの人が多い。
でも、そういう人たちだけではなく、もっとゆるーい感じの人、でもゆるすぎずやってる人、色んな人がいていいはず。
そんな中で「私はそうはしないけど、あなたのそういう道もあるよね」と、互いに認め合えるような日本になれば、すごくいいなーと真剣に思う。
「よし、これからは、自分が主役の人生を送るぞー」と決意を新たにする今日このごろである。