3.仕事も家庭も、どちらも大切だから、両立できるよう工夫しよう。
ー高野:山本社長が、新しいことや誰もやらないことに取り組まれるというそのアイデアは、どこからくるんでしょうか?
ー山本:自分の経験からですね。例えば5年前「メールの時代は終わりました」というキャッチフレーズでチャットワークをリリースしましたが、2002年頃からずっとチャットで仕事してきた当社にとって「チャットで仕事する」ことはごく当たり前でした。逆に「便利で効率良くなるのに、なんでみんな使わないんだろう」と思っていました。
ただ、はやく打ち出せばいいというものではありません。
早過ぎれば世間には全く受け入れられませんし、普及しはじめてからでは遅い。その絶妙なタイミングを見極めるのが、経営者の大事な仕事だと思っています。
ー高野:勉強になります!では話は少し変わりますが、現在2児のパパでもある山本社長ですが、お子さんが産まれてから経営や考え方に変化はありましたか?
ー山本:ありましたね。子育てがこんなに大変だとは思っていませんでした。仕事で大人とやりとりするほうが断然楽です(笑)なぜなら言葉も分かるし理屈が通じますから。子どもに理屈は通じませんから本当にに大変ですね。自分が子どもを持ってみてはじめて、世の中の母親全員を尊敬するようになりました。ほんとにすごいな〜と。
とはいえ、育児を積極的にするようになったのは、シリコンバレーに来てからです。日本にいた頃は、毎日のように会食があり、IT飲み会で全国に出張していたので、子どもの面倒を見るのは休日しかありませんでした。
でも、妻と生後半年の娘にも一緒にシリコンバレーについてきてもらったことで、妻は家事や育児で頼れる人が周りに誰もいない状況になりました。そこでさすがに「僕も一緒に家事や育児もちゃんとやらなあかん!」と思うようになりました。
普段は、娘の幼稚園のお迎えにもいきます。アメリカは、家に帰って家族と晩ご飯を食べるのが普通なので、僕も夜は家族とご飯を食べますし、率先して食器洗いもします(笑)
そんな日々を過ごすうちに、育児と仕事は全く別物ではなく、両方に良い効果をもたらすこともわかってきました。
以前、娘の友達のバースデーパーティーへ行った時のこと。パーティーに来ていた人と話していたら、Google、Apple等、知っている会社で働いてる人ばかりでした。そこでチャットワークの話をしたら「私の会社で使っているチャットサービスが信じられないくらい使いにくいから乗り換えたい!」「うちの会社の顧客にもチャットワーク提案するよ」という話にまでなりました。
ー高野:おぉ…。さすがシリコンバレーですね。
ー山本:仕事一筋もいいですが、世の中にはたくさんの世界があり、それらが自分の仕事に活きたり、人としての幅を広げてくれることになります。「仕事も家庭もうまくやるなんて大変」という考え方もありますが、どちらも素晴らしいものなので、うまくやる方法を考えたいですよね。工夫すれば、やれないことはないですから。
そして何よりも、一番身近な家族が幸せであることが大切です。家族が応援してくれるから仕事も頑張れますし、家族を大事にするのは当たり前です。先日弟夫婦にも子どもが産まれ、弟も出産に立ち会いましたが、当社の『出産立ち会い制度』を使って出産予定日前後は在宅勤務をしていました。また実家へ帰省する費用を会社が一部補助する『ゴーホーム制度』というものもあります。
僕は会社を「どうせ無理」ではなく「やったらできるかも」という風土にしていきたい。30年前は不可能だったけれど、今はネットが普及していて可能になることはたくさんあります。
おかげ様で、当社で働く女性はほんとにパワーがあります!中には「そのへんの男性より男前」というほど、ガンガン頑張ってくれている女性も…(笑)心強いですね。
4.EC studio時代の方針を変えてまで、大きく舵をきった理由。
ー高野:ChatWorkに社名変更される以前のEC studio時代には、『上場しない』『規模を大きくしない』『社員は40人以上にしない』等の『しないこと14ヵ条』を作っておられましたが、昨年あたりからその方針を変更し、大きく舵をきっておられます。創業以来大切にしてこられた方針を変えられたのはなぜなのでしょうか?
ー山本:はい。『今の自分にしかできないチャレンジをしたい』と思ったからです。会社を興して10年ほど経った頃、ふと、このままいいのかなと思うようになりました。
・僕がいなくても会社は問題なく回っている
・ストック型で毎年業績が上がるビジネスモデルがある
・そして僕は、講演や書籍出版の依頼が増えてアウトプットばかりしている
…僕は30代前半でまだ若いのに、このままじゃだめだ、もっと経営者としてステップアップしたい!と思いました。その時、3つの選択肢を考えました。
・新しい会社を作るか
・大企業の社長になって日本の会社を経営するか
・グローバル展開をするか
今すでに会社があるのに新しい会社を作るのはおかしいし、大企業の社長なんて、30歳そこそこで中小企業の経営しかしたことない僕に依頼がくるわけがありません。最後のグローバル展開は、もともと視野にいれていたことだったので、グローバル展開にチャレンジしよう!と決めました。
自己資本で、GoogleやFacebookと戦うのは、たまらなく面白いことだとワクワクしたんです。
ただ、シリコンバレーに行ってチャレンジする中で、自己資本で世界と戦う限界を痛感するようになりました。当社より後から出てきた会社が、資本をいれてぐんぐん伸びていく姿をシリコンバレーで目の当たりにしつつも、自分たちは大きく動けないもどかしさを感じていました。
そしてある日、役員に相談してみました。「資本をいれて、大きくチャレンジしたほうがいいと思うんやけど、どうやろう?」と。すると「はい、それがいいと思います。僕たちだいぶ前からそう思ってました!」という答えが返ってきました。「え!そうやったん!?」と拍子抜けしてしまいました(笑)
それまで実は社名はEC studioで様々なサービスがあったのですが、それ以降社名をChatWorkに変更し、全てをチャットワーク事業一本に絞り、大きく舵をきりました。
ー高野:すごい意思決定ですね!新たなチャレンジの幕開けなのですね。
ー山本:今後の当社の大きなチャレンジは、もちろんチャットワークを世界に広げていくことですが、同時に「社員満足」「ユーザー満足」「株主満足」のトライアングルを成り立たせることです。今までの当社は「社員満足」と「ユーザー満足」の2つをとても大切にしてきました。そこに「株主満足」が加わると、たいていは何かを捨てないといけないと言われます。
でも、このトライアングルは相反しないと思っています。むしろ、その中でも一番難しい「社員満足」に取り組んできた仕組み、風土という土台がある僕たちは、とても強い。
ー高野:すごいですね!お話をお聞きしているだけでワクワクします!その中で昨年から今年にかけて、社員数が倍になられたんですね。
ー山本:はい。ただ、一気に社員数が倍になったとはいえ、一人ひとり丁寧に採用をしています。
『仕事を通して自分の人生を良くしたい人』
『世界中の働き方を変える!というミッションに一緒にチャレンジしてくれる人』
『より良い人生のためにあくなき追求をしていく人』
こんな方々と一緒に、僕たちはこれから大きなチャレンジをしていきたい。
未来の自分を喜ばせてあげられるのは、今の自分しかいません。今僕はすごく幸せですが、それは過去の自分が頑張ってきたお陰です。つまり、3〜40年後の自分がハッピーであるためには、今頑張らないといけません。そうやって常に人生にチャレンジし続けていく姿勢はとても大切だと思っています。
ネットが進化し、みなが自由にチャレンジできる。こんな恵まれた面白い時代はありません。もしかしたらChatWorkが、数年後にはGoogleみたいになっている可能性もゼロじゃない。だったら、たとえ大きな目標だったとしても、そこにとことん、チャレンジしていきたいですね!
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驚くほど熱い情熱を持っているのに、暑苦しさを微塵も感じさせない爽やかな山本社長。ご多忙中にも関わらず『目の前にいる人に喜んで頂くことが大事ですから』と、時間めいっぱいにたくさんお話をして下さいました。また、シリコンバレーと日本を行き来しながらも、ご家族を大切にされている姿は、本当に尊敬します。大きなことを成し遂げる人ほど、目の前の小さなことを大切にする。それをまさに体現されている山本社長から、今後も目が離せません!
ChatWork株式会社について
設立:2004年11月11日(創業 : 2000年7月15日)
事業内容:チャットワーク事業(チャットワーク) ソフトウェア販売事業(ESETセキュリティソフト)
大阪本社:〒564-0032 大阪府吹田市内本町 2-21-8
代表者:山本 敏行(やまもと としゆき)
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