働く女性向け社外メンター紹介サービス「メンターmikke(ミッケ)」を手掛ける井本七瀬さんにインタビュー【後編】


2018年に、働く女性向けの社外メンター紹介サービス「メンターmikke(ミッケ)」をスタートされた、NPO法人アーチ・キャリアの代表理事 井本七瀬さん。前回のインタビューに引き続き、今回は、ご自身も会社員として働かれた後、独立してサービスを立ち上げられた経緯についてお聞きしました。

(1)「メンターmikke」立ち上げの経緯

「パワーママプロジェクト関西」も、「メンターmikke」の立ち上げに大きく影響したとか?

はい。もともと私は営業職ではありましたが、自分が育休に入る前までの社外人脈はゼロでした。育休中は、当然初めての経験だったので色々と悩んだり壁にぶつかったりすることが多く、同じような境遇の女性と出会いたいと思ったのですが、どうすれば出会えるか分からなくて。

手当り次第に交流会に行ったのですが、どれもしっくり来ませんでした。

そんな時、東京で、ママのロールモデルをシェアして明日の活力に繋げる「パワーママプロジェクト」を運営されている方に「パワーママプロジェクトを関西でもやってみたら?」とお声がけ頂きました。

右も左も分かりませんでしたが、ワクワクして「やります!」とお返事し、立ち上げて運営をスタートさせていったところ、素敵なワーママの皆さんのネットワークを築くことが出来ました。

関西にも、素敵なママ、両立ママがこんなにたくさんにいるんだ!

と正直驚きましたね。

井本さんは、もとから人脈が広い方だと思っていましたが、違ったのですね(笑)

そう見られがちですが実は違うんです(笑)私は、新卒で前職の会社に入社し、色んなチャレンジをさせてもらい、育休から復帰後にも社内で初の短時間勤務管理職というチャンスを与えて頂いたのですが、周囲にロールモデルもおらず、右も左も分からなくて、とても不安だった時期があります。

ただそんな中でも、こうして自分らしくやって来ることが出来たのは、社外にメンターの女性がたくさんいたからです。

まさに似た境遇にいて悩みを共有できる女性もいれば、一方で、軽やかにしなやかに壁を乗り越えていかれている先輩の働く女性ともたくさん出会いました。

そういった方々とお話する度に、

「社内で見えている景色、自分の視点だけが全てではない」「悩みながらも頑張っているのは私だけじゃない。みんな頑張ってるから頑張ろう!」

と勇気をもらうことができました。加えて、そこで得た新しい気づきが、自分が働いている組織や仕事に活かされるといった好循環が生まれたりもしました。

そこからどのように「メンターmikke」構想にたどり着いたのですか?

先輩女性に私が相談する一方で、逆に私にも「気さくに話せる井本さんに、自分の悩みの相談に乗って欲しい」というお声もたくさん頂くようになりました。その時に「であれば、壁を乗り越えた働く女性と、今まさに悩んでいる働く女性が、出会える場があればいいのにな」と思いました。

ただ、それをどうやってビジネスモデルにすればいいか分からなかったんですね。

その後、京都府でメンターメンティの支援のプロジェクトがあり、メンター側で関わらせて頂くことになりました。その時に「初対面の相手であっても、こんなに本音をたくさん話してもらえるんだ。面談を通じて、人ってこんなに変わるんだ」と私自身が実感して。

「これを、一過性のプロジェクトで終わらせるのではなく、事業継続できるようにサービスとして提供できるととても良いのではないか」

と思い、当時一緒にメンターをやっていた女性の皆さんに相談したところ「ぜひやってみよう!」ということになって。

私は当時から、パワーママプロジェクトを運営していたので、周りに素敵な働く女性がたくさんいましたし、女性のリソースが少ない課題を持っている会社が多いのであれば、私の得意を活かせば、その問題を解決できると思いました。

全ては、井本さんの実体験から来ているのですね。

はい。私自身、社内の皆さんだけではなく、社外人脈にたくさん助けられました。社外の方との出逢いを通じて「実務に活かせる特別なスキルを学んだ」「能力がアップした」というわけでは決して無く、メンタル面で大きく救われましたね。

皆さんに言われたことが心に響き、ずっと悩んでいた問題が解決され、道がひらけたことがたくさんありました。

例えばですが、私には「育児休業を取得したことで、同期や同僚と比べて、昇格や昇進に遅れをとってしまう!置いていかれてるような気がする!」と得体のしれない焦燥感に取りつかれ、躍起になっていた時期がありました。

そんな時、メンターと慕っている方に相談してみたところ、こんな風に言われました。

「そんなに焦らなくていいよ。キャリアは長いんだから、ずーっとアクセル踏みっぱなしじゃなくていい。かといってブレーキを踏む必要はないけれど、来たるべき時に、チャンスは必ず訪れるから、焦らなくていいよ。」

って。この言葉を上司に言われたら「自分はそんな経験無いくせに!」と思っちゃったかもしれませんが(笑)社外の先輩女性に言われたことでものすごく響きました。

「人生を変えるのはいつだって出会い」。

これからも、働く女性の皆さんに素敵な出会いを提供するプラットフォームで有り続けたいと思っています。

素敵な出会いショートカットで行けるのが「メンターmikke」なんですね!

本来ならば「メンターは人から与えられるものではなく、自分で見つけるもの」であるとは思うのですが、それが難しいという方も多いです。では「そういう方々は能力が無いのか?」というと全く持ってそうではなく、単純に「きっかけがないだけ」なんです。

「メンターmikke」のユーザーの方の中には、このことをきっかけに、社外の勉強会や交流会に参加するようになったといった方もとても多いんです。「メンターmikke」がきっかけになり、その後はどんどんご自分で交流を広げられ、さらに素敵な出会いを見つけていって頂きたいなと思っています。

(2)企業とメンター制度

社内でメンター制度を導入している会社もあるけれど、あまり機能していない会社も多いようですよね。

そうですね。メンターをやることになった方が『「上司に突然メンターをやって」と頼まれたので、とりあえず後輩とご飯を食べに行って話を聞いてみた』というパターンも多いようですが、それでは、うまくいかないですよね。

私は、社内メンターを否定しているわけではなく、社内にメンターがいることはとても素晴らしいことだと思っています。ただし、社内で完結するのではなく、加えて社外でもメンターを見つけておくとなお良いと考えています。

その会社1社で働く人たちの考えが全てではなく、社外の人たちが俯瞰視、客観視して同じ状況を見ると、全く違う景色に見えると思うんですね。その気づきを社内にアウトプットすることで、今までにないより良い解決策が見つかっていくはず。

井本さんは、女性だけではなく大学生だったり地域社会だったり…交流の幅が広いですよね

私のテーマは「枠を超える」なんです。かっこよく言うと、ボーダレスネットワークがもたらすイノベーションというか(笑)学生であれば大学の枠を超えるとか、女性は社内の枠を超えるとか、そうやって超えていくことで、化学反応が起こり、イノベーションが起きることって多々ありますよね。

そういう意味では、女性は短時間で初対面の方と仲良くなれる方が多いので、ネットワークを形成できやすい。外部ネットワークをもった瞬間、人は強くなれる。あとはその「きっかけだけ」なんだと思います。

最近は企業からの問い合わせも増えているとか?

はい。企業での教育というと、実際の実務面の研修や講座が多いと思います。例えば女性管理職を増やしたい会社が、女性社員対象にリーダー研修を実施するなど。そういったことはもちろん大切ですが、一方で、そもそも「リーダーをやりたい」という思いがなければ、研修をしても何も変わりません。

その前にまずは、マインド醸成をすることがとても大事だと思います。

「メンターmikke」を企業で導入し、メンターとの面談を通じて気づきを得られた女性が、大変前向きにになって新たなことにチャレンジするようになったという事例も最近は増えてきました。

とはいえ、企業で導入する際には、事前の説明が最も大事ですね。単に「社外メンターサービスを導入します」ではなく「なぜこういったことをするのか?」を現場の方に理解して頂くことでより効果が出るので、最近はそういった事前研修も提供しています。

(3)面談のやり取りが、解決の糸口に

面談では「上司に理解が無い」という悩みを持つ女性も多いと思うけれど…そのあたりはどう解決していかれる?

そうですよね。でもそういった悩みも、一旦整理して社外の人に話してみることで、解決の糸口が見えたりするものなんです。

社内の人に相談すると「あぁ、あの上司ね、大変だよね、分かる分かる」と、みなまで言わなくても分かってもらえます。でも、なんの情報も知らない社外の人に伝えるには、様々な前提から整理して伝えないと伝わりません。

そして整理しているうちに「これは全てが全て上司のせいとも言い切れないな」という感覚になる方も多いようです。例えば、

メンター:「それは、上司がそう言ったのですか?」
メンティ:「いや、言われてないけれど、そう思っているはずです」
メンター:「なるほど。そう思ってると〇〇さん自身が感じているんですね。実際には言われていないのにそう感じるのはなんでなんでしょうね?」
メンティ:「そう言われてみればそうですね。なぜそう感じてるんでしょう?(⇒思い込みに気づく&内省が進み気づきを得る)」
メンター:「一度直接上司に話してみてもいいかもしれませんね」

といったやり取りで、物事が解決の方向に向かうことも多々あって。

またメンターの方は皆さん管理職なので、働く女性の気持ちだけではなく、管理職側の気持ちも分かることが大きいですね。

例えば「あなたはすごく頑張っているけれども、その言い方では伝わらないから、言い方をこう変えてみたら?」といった交渉のアドバイスなどもしてくれます。

また「社内で他に味方になってくれる人がいない」と思いこんでいた女性が、メンターからの質問によって「前の部署の上司とは未だにやり取りしているから、その方に相談してみるといいかも!」という突破口を見つけたというケースもありました。

今自分が悩んでいることは「どうにもならないこと」なのか「どうにかできること」なのか。それが整理できるだけでも、ずいぶんと違いますよね。

会社の上司の方も、女性が外でメンター持ってると助かるでしょうね。

はい、そう思います。「一人で頑張る時代」「1社で完結する時代」は終わりました。

昔は、若手男性で24時間働ける人が基準だったので、今よりマネジメントはやりやすかったと思いますが、現在は時短、派遣社員、外国籍と…部下育成にも個別対応が求められるようになってきました。

ただこれら全ての人をマネジメントするなんて、相当な人格者じゃないと無理ですよね。

ですから、これからのマネージャーに求められるのは「自分で抱え込むのをやめること」だと思います。

例えば女性社員から、育児と仕事の両立についての悩みを聞いた時「僕は育児と両立経験が無くて、あなたの悩みは解決できないから、○○さんに相談してみるか?」とつないでくれて、後で報告すると「なるほど!僕も勉強になるわー!」と言ってくれるような上司。最高だなーと思います。

自分以外の誰かに頼ることは、放棄でも、恥でも有りません。上司の方が、その感覚に変わっていくこともまた、大事だと思います。

サービス開始から1年。今後はどんな展開を考えているのですか?

社外メンターの有料ギフト券を、プレゼントできるようにしようと思っています。友達でも、部下でも、自分がプレゼントしたい相手に渡せるようなものを。

上司で、社外メンターのギフト券を部下にプレゼントできる方なんて、めちゃくちゃ素敵じゃないですか?(笑)

あとは、11月10日(日)に1周年イベントを行う予定です。

【参加費無料】11月10日(日)「メンターmikke」設立1周年感謝祭~メンター・メンティ体験企画

1年たったとはいえ、まだまだこれからのサービスなので、しっかりと丁寧に今後も積み重ねていきたいと思います。

■NPO法人アーチ・キャリアのサイトはこちらから
https://www.archcareer.org/


Woo!編集部。運営会社である株式会社ナチュラルリンクは、”働く女性をHAPPYに 女性のチカラで企業を元気に”という思いのもと、Woo!の運営や、企業の女性活躍推進サポート事業を行っている会社です。

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