3.A社での壮絶研修について。
ー高野:すごいですね…!そちらの企業では、どのような関わりをされたのですか?
ー木村:社長と幹部の方にチームビルディング研修をさせて頂きました。すると3回目の研修中、参加頂いていた幹部の方の一人が、私の発言が気に障られ怒鳴り声をあげてこうおっしゃったんです。
「あんたはこの研修して生産性が上がるって言うけど、何も変わらへん!これやったら、この時間に自分の仕事をしている方がよっぽど生産性上がる!おまえ(社長)もこんな人連れてきたところで、俺たちは変わらんからな!!」って。
ー高野:えー!社長のことを「おまえ」って…。こ、怖い…。
ー木村:私もびっくりして、その日の研修は大汗かきました(笑)でもね、その時に気づきました。「そうか、皆さんは、私が皆さんを変えにきたと思っておられるんだな」って。
そこでこんな提案をしてみました
「今から研修やめて、会議をしませんか?」と。
ー高野:おぉ…。
木村:「私は皆さんを変えに来たわけじゃない。みんな毎日、お客様のこと、家族のこと、会社のことを真剣に考え、一生懸命頑張っている。朝起きて、会社に来たら戦争のように仕事がはじまり、仕事が終わると家に帰ってお風呂に入って次の日を迎える…言い方は悪いけれどハツカネズミ状態になっていて、大事な自分のことが一番後回しになってしまっている。
だったら、1ヶ月に1回くらいは立ち止まって、”何のために今の仕事ををしているのか” ”自分たちは何処に向かって進もうとしているのか”、自分の中で向き合う時間にしませんか?」
と伝えたんです。
ー杉浦:みんな会社をダメにしたいと思っているわけじゃない。会社を良くしたいと思っているんですが、それには社長や幹部の皆さんがお互いにしっかり向き合わないといけないですよね。
ー木村:はい。みんな、答えは自分の中に持っているんですよね。「社長は私をいれれば、会社は変わると思っておられるかもしれませんが、それは違います。今、ここで何が起こっているんですか?まずはみんなが向き合って、腹据えて話をすることからはじめませんか?」と伝えました。
そのうえで研修の内容が今の皆さんの状況に当てはまらないのであれば変えたって良いし、
私がいない方がいいならやめてもいい。これは皆さんの時間だから、皆さんに価値のある使い方を考えましょう、私は皆さんの意見の交通整理をするだけですと。
ー杉浦:その日は、大声で怒鳴った社員さんが、研修後エレベーターに乗ってビルの前まで送って下さって、「先生ありがとうございました!また次回からも是非研修に来てください!」と言ってくださったんですよね。後からお話を聞いて、本当にすごいと思いました。
ー高野:すごいですね…人の人生や、会社を変えるきっかけを、木村さんは作っておられるんですね。短時間で参加者の方の心をそこまで動かしたのは、様々な経験を乗り越えて来られたからこその木村さんの深み、重みがあるからですよね。机上の空論では絶対そうはいかないと思います。
ー杉浦:木村さんはCA時代から、相当な修羅場を経験されていますから。あのアメリカの同時多発テロ「911」もくぐり抜けて来られたんですよね。あの時まさに、雲の上で飛行機に乗っておられたと聞いて驚きました。
ー木村:はい、その時は、別の飛行機に乗務していました。機内では情報が少なく、テレビの画像も見れない中で重要な判断をしなければならず、みな必死でしたね。
ー高野:今のように、Twitterやフェイスブックも無いですし、空の上で情報が無い中で判断するのは並大抵ではないですね…。
ー杉浦:逆にTwitter等があれば、情報が錯綜してもっとパニックになっていたかもしれませんね。
ー木村:当時私はCAの長だったので、機長にコックピットに呼ばれて「とにかくこのカンパニーラジオを聞いてくれ」と言われました。イヤホンを耳に当てると、管制官と飛行機の交信が聞こえるのですが、「ハイジャック、ツインタワーに飛行機が衝突、ペンタゴンに、●機がハイジャックされてる…」という声が聞こえてきて…これは異常事態が起こっているのだとすぐに解りました。
まず、「この事実を乗客に知らせるかどうか」。これも私の判断に委ねられたんです。
ー高野:えぇ…もし伝えたら乗客はパニックでしょうし、もしかしたら自分の機体もハイジャック犯が乗っているかもしれない…まさに異常事態ですが、木村さん自身はパニックになられなかったのですか?
ー木村:それがね、不思議と制服を着ていると冷静なんですよ。スタッフとも「とにかく私たちがしっかりしよう!」と気持ちを1つにして、様々なシミュレーションをしながら対応しました。さすがに、飛行機を降りた日、CAの皆は怖かったのか全員私の部屋で寝ましたね。「もう大丈夫だから自分の部屋で寝たら?」って言っても「一緒に寝させて下さい!」って…笑。みな、必死だったからどっと疲れたんだと思います。
ー杉浦:その他にも日常的に、怒鳴られること、クレームなんかも、色々あるんでしょうね。
ー高野:聞いているだけで胸がいっぱいです…そういったことは日常茶飯事だなんて…どのようにして気持ちを消化しておられたのですか?
ー木村:ゲームにしないとやってられないですよ(笑)終わりよければすべて良し!ですから私は、「誰があのお客様の心を掴むか!」「あのお客様をいかに笑顔にするか」という風にゲーム感覚で対応していると、どんなことも大抵は楽しく乗り切って来ることができました。体力と気力が勝負な世界ではありましたが、本当に鍛えられましたね。
ー杉浦:本書けますよね。ドラマ何本でも作れそう(笑)
ー木村:はい、いくらでも(笑)それらの経験は、全て今に生かされています。感謝ですね。
4.コーチングとの出会い
ー高野:木村さんは、CA時代から「人の育成」に興味がおありだったのですか?
ー木村:前職で勤めていた時の後半は、「新人教育」や「国内線から国際線に移行して来るスタッフへの教育」等に携わっていました。その時に、「人が動く」「人が成長する」ということに興味を持ち始めたんです。
ー高野:そこから退職を決意されたのはどのような思いからですか?
ー木村:これ以上ここにいてはいけないと思うようになったからです。当時のコーチから「人が腐るときは見えない根っこから腐るんだよ。それに本人は気づいていないんだよ。」と教わって、とても怖くなりました。このまま、上のいうことは絶対、こんな大きな会社は所詮変わらないと諦めて働き続けたら、自分が腐りきってしまうと思いました。
ー杉浦:久しぶりにお会いした方で「あれ?この人前はこんなこと言う人じゃなかったのにな」と思うことがあります。現場に行かなくなり、チャレンジしなくなったら、人間は一気に変わってしまうものですよね。
ー木村:そうですね。でも会社を辞めてから、気づきました。「私はすごいところにいたんだな」って。
独立して痛感しましたが、1人で出来ることって本当に少ないんです。企業に属して、仲間がいるというのは、決して当たり前ではなく実はすごいことだと…。
もし私が勤めている時に「会社や組織とは何か」がもっと分かっていれば、全く違う気持ちで働いていたと思います。
ー高野:私も、退職して初めて前職の有難さに気づきました。会社の看板や信頼の土台の上で仕事ができていたこと、お給料が毎月決まった日に振り込まれること、何かしよう!と言えばみなで一致団結して取り組めること、色々なことが、「当たり前じゃなかったんだ」と気付きました。
ー木村:そうですよね。私が何故今、「企業」と「経営者の方」に対してお仕事をさせて頂いているかというと、「企業が良くなれば、日本が良くなる」と信じているからです。また、私は前職で仕事を通して成長させてもらい、仕事に磨いてもらったので、これからも「仕事」という部分に自分が関わっていけたら嬉しいですね。
ー高野:素敵です!杉浦さんも独立されて、やはり企業で働いていた時の感謝や有難さをより実感されるようになりましたか?
ー杉浦:そうですね。自分の努力だけではなく、周りが引き上げて下さった部分は大きいですね。僕の場合は、仕事のスタンスの土台はキーエンスで培われました。その上で様々な職場でお仕事をさせて頂き、どの環境でも得難い経験ができたと思いますね。
ー高野:なるほど…では、木村さんが、「コーチング」と出会われたきっかけを教えて頂けますか?
ー木村:前職を退職してからです。女性は人生に迷ったとき占いに行く方が多いですが、私も占いに一度行ってみました。ただ、そこで「あなたはこうだよ」と言われても、それによって自分の心が動くわけではありませんでした。「やっぱり答えは自分の中にあるんだろうな」と思っていたある日、日経新聞を読んでいると、コーチングの記事が目に飛び込んできました。
そこに「答えは自分の中にある」と書いてあったんです!そのフレーズにびびっときて、コーチングを勉強したいと思うようになりました。
前職でも「人が何によって動かされ、成長するのか」という部分には興味がありましたが、コーチングについては、まずは自分を理解したいという思いの方が強かったですね。本当に自分がしたいことは何なのだろうと。
ー高野:人ってどういうタイミングで変わるのでしょうか?
ー木村:コーチングは、皆さんに機能するかといえばそうではないと思います。
ー杉浦:そうですよね、本人の中に欲求がないと変わらないですね。また人には、精神的に深く潜っていく時期があると思いますが、その時にいい方向にスイッチが入ると、人生は好転していくように思います。逆に、違う方向に行くとどんどん逸れてしまいますよね。
ー木村:ぐ〜と潜って行く時に、「誰と出逢うか」がものすごく大事ですよね。
ー高野:そのような出逢いは、自分が引き寄せているんでしょうか?私も今まで様々な出逢いによって人生が変わってきましたが、後から「あのタイミングの、あの出逢いのおかげだったんだなー!」と感じることが多いです。それは決して自分だけでは引き寄せられなかった気がします…。
ー杉浦:僕が思うになので「これが正解だ!」ということではありませんが、「出逢いはご先祖さんが引き寄せてくれている」ように感じますね。僕は月に1回はご先祖さんのお墓に報告に行くようにしていますが、行くようになってから流れが変わった気がします。
ー木村:それは、何かきっかけがあってのことですか?
ー杉浦:いえ、大きなきっかけがあったわけではないんですが、若いころ、働いていた職場から車で5分のところにお墓があったので、一度行ってみたんですね。そこで「こんなに近所にお墓があるなら、行かない手は無いなぁ」と思い、そこから習慣化するようになりました。
ー木村:うまくいっている方は、あえて「僕は先祖を大切にしている!」とは言わないですが、実はご先祖を大切にされているという方が多いですよね。
私は、人が引き合うのは、エネルギーの周波数が全てだと思っています。良い人の周りには、素敵な人がたくさんおられる。
だから私は、自分のエネルギーを常に綺麗にしておこうと常々意識していますし、今自分の周りにどんな方がいるかが、自分自身がこれでOKかどうかのバロメーターになるんです。
ですから私は、自分のエネルギーを常に綺麗にしておくことを心がけています。
ー杉浦:本当にそのとおりだと思います!
ー高野:わー深い、素敵です!今日はたくさん勉強になりました、本当にありがとうございました!
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事前に木村さんの経歴を拝見し「すごい方だな…」と怖気づいていた私ですが、お会いした瞬間木村ファンになってしまいました。穏やかな空気と、凛とした美しさと、全てを包み込む優しさ。「木村さんのような素敵な働く女性になりたい!」と、終始思い続けたインタビューでした。どんな苦労も、つらい経験も、全てご自身の魅力にして進み続けておられる木村さん。これからのご活躍からも、目が離せません!
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