2人目出産で、私が恵まれた待遇の会社を思い切って退職した本当のわけ。


3 長女の登園拒否!~迷い続ける日々

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復職後1年と少しが過ぎた2013年の晩夏、4歳の誕生日を迎えようとしている第1子(長女)が、
保育園近くまで行くと「行きたくない」と言い出し、涙まで流すようになりました。
長女は保育園に通い始めた頃や次女の産休・育休前後の長い休みの後に登園を嫌がったことはありましたが、
4歳を前にした登園拒否は赤ちゃんの頃の登園拒否とは違うように感じました。

その時、思い出したのはその数か月前、会社の復職後研修で聞いた年上のママさんの話。

その先輩ママさんには小学校4年の女の子、幼稚園の男の子がいて、私と同じタイミングで第3子の育休から復帰していたのですが、彼女は「長女のために次女の育休があってよかった」といったのです。
彼女によれば「男の子は小さいころは手がかかって大変で、女の子は小さいころは手がかからず楽。でも、女の子は大きくなってから話を聞いてやらないといけないから、大きくなってからが大変なの」ということでした。

4歳を前にした長女の登園拒否は、赤ちゃんを卒業した長女が友達関係や自分が過ごす環境に対して様々な複雑な感情を持ちはじめ、その複雑な感情を自分では処理しきれずに発しているSOSのように感じられました。
そんな長女を前に、先輩ママさんの言葉を思い出し、今すでに「話を聞いてやらないといけない」時が来ているように思いました。
そしてこれから先、長女、そして次女が登園または登校を嫌がったり時間をかけて話を聞くことを求めたりすることがあるだろう、
そのとき私は今のまま勤め続けていれば子供より仕事を優先して子供を登園/登校させるだろう、そしてそれを将来悔いるだろう、そう思いました。

そう思ってからは、第2子の育休明けから心の片隅に巣食っていた「子供と過ごす時間が足りない」という思いが日増しに膨らみました。

当時の勤務先は裁量労働制を採用しており、仕事が終われば何時に帰宅してもよく、
理屈では私は2時に退社してもよかったのですが現実はそうはいきません。
そんな現実を考えるうち、「子供が親を必要とするとき、必要とされる時間、子供と向き合う時間」を確保するためには両親のどちらかが勤めを辞めるほかない、という結論に達しました。
この結論に至る詳細は機会があればまた別に書いてみたいと思いますが、
要するに今の社会や会社では私が本当に必要とする「柔軟な働き方」はできず、「いま」親を必要としている子供を抱える私は、それができるようになるのを待つことはできないと判断したのでした。

こうして「私か夫のどちらかが勤めを辞めるほかない」との結論に至り、私が辞める方が潰しが利いてよいと決め、
その結論に納得しているのになお、私の中では退職をためらう気持ちが渦巻き続けました。
頭では私が辞めて独立・自営の道を歩むのが最善だとわかっているのですが、心は当時の勤め先を辞めたくないという気持ちでいっぱいで、
退職を決意できず、悶々とした日々が続きました。

4 迷いの原因は・・・!~迷いが消えた

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そんな日々が4か月続いて迎えた2014年の元旦。私はなぜ、会社を辞めたくないのか自問していました。

(問)会社を辞めて失うものは?
(答1)楽しくて、のめり込める仕事(私にとって仕事は、学びと気づきを与えてくれる、自分の好奇心を満たす最高の遊びのようなものでした)

この答えに対し、「楽しくてのめり込める仕事」は本当に、今の勤めを辞めると失うのか?と再度、自問します。

再度の自問に対する答え
→私は何をやってもだいたい楽しくてのめり込む性質。だから、勤めを辞めても、独立・自営して何かすることで「楽しくてのめり込める仕事」をすることになる。つまり、勤めを辞めても「楽しくてのめり込める仕事」を失うことはない。

この要領で次々に、「会社を辞めて失うものは?」という問いに対して答えを出し、
その答えに対し「それは今の会社を辞めると失うのか?」と再度、問い直す自問自答は以下のように続きました。

(答2)気が合う楽しい仕事仲間
→どこに行っても、気が合って一緒に仕事ができる人の一人くらいは見つかるもの。しかも私には気が合って一緒に仕事をしたい人がすでに社外にいる。だから、勤めを辞めても「気が合う仲間と一緒に仕事をする」ことができなくなることはない。

(答3)○○会社社員というブランド、身分証明
→正直、これを失うのは痛い。けれども、いつかは(=定年が来れば)この会社を辞めなければならず、嫌でも失ってしまうもの。であれば、いま自ら手放して、「○○会社所属」に頼らず稼げる信用・実力を養うことにチャレンジすべき。だから、「○○会社社員」という身分を失うことは、退職を決意する障害にならない。

(答4)安定して恵まれた今の収入
→・・・。!!!

会社を辞めて何を失いたくないと考えているのかを自問して出てきた「お金(今、得ている収入)」という答え。
この答えが出た瞬間、自分が、安定し恵まれた収入を失うのが嫌で退職したくないと思っていることに初めて気が付いて愕然としました。

弁理士という資格は独立開業可能な資格なのですが、私は資格を取る前も取ってからも独立開業・自営する気はさらさらなく、誰かに雇われて自分が必要とするお金をもらえる程度-例えばパートの年収に毛が生えた程度―に働ければいい、と考えていました。
退職を決意できずに迷っていた当時、私の収入は私が必要とする額を大幅に上回っており、私が勤めるために必要な「都心で暮らし、子供を預けるために必要な費用」をなくせば、夫の収入だけでもつつましく暮らしていくことは可能で、金銭的理由から私が退職を忌避する必要はなかったのです。

にもかかわらず、私は「(楽しく好きな仕事ができて)楽してたっぷりお金がもらえる」ことに執着を感じて退職をためらっている・・・そう気づいた瞬間、もはや何の迷いもない、退職する、と決意しました。

迷いが消えた後、私は退職する最終期限を長女が小学校に入学する2016年3月末と定め、脱サラ・独立に向けて走り出します。実際に退職したのは2015年9月、退職希望を上司に伝えたのは2015年3月だったので、退職を決意してから退職に向けて実際に動き出すまでに1年以上がかかりました。

退職を決意してから退職準備に入るまでの1年間、そして退職するまでの1年半、退職したくないという気持ちは何度も頭をもたげました。それでも退職を決意してから退職するまでの日々は充実した日々でした。そして退職してからの日々は、思っていた以上に肩の力を抜いたチャレンジに溢れ、気づき、学びが多く、刺激に溢れています。

退職を決意してから退職するまでの日々、そして退職してからの日々については、また機会を改めて書くことができればと考えていますが、本稿の締めくくりとして、私が会社を辞めた本当の理由は子育てを優先させるためでなく、自分のための自分の人生を切り替えるためだったことを告白いたします。

会社を辞めたくなくて悩んでいた3年前、私は何一つ不自由のないサラリーマン生活に安住したいと思う一方で、そこに安住してはいけない、長い老後を働き続けていくために40歳を過ぎ50歳を超える前に自分の職能をリセットすべく新たなチャレンジをしなければならないと感じていました。
私はいま、長女が登園を嫌がり私に退職を決意させてくれたことで、安定を求める気持ちを振り切って新たなチャレンジができる余力が残るうちに人生を切り替えることができたと思っています。

長い文章を最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。


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小野 曜(おのよう)
転石 知財事務所 / 弁理士 転石 ビジネスサークル/代表
【プロフィール】
1998年 京都大学大学院農学研究科 修士課程修了、同年、栗田工業株式会社入社。2002年弁理士資格取得、2003年~2008年まで国内特許・法律事務所勤務。2008年~2015年 株式会社野村総合研究所勤務。途中、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、日本弁理士会「知財コンサルティング検討委員会」「研修所運営委員会」などを歴任。
2015年 野村総合研究所退職、転石 知財事務所設立。弁理士として、商品・サービスの独自性を特定、独自性を利益の源泉とするビジネスモデル、差別化戦略、模倣防止策の立案と実行を手掛ける。また、転石 ビジネスサークル代表として、プロフェッショナル人材が所属を超えて集まり課題解決を図るタスクフォースの編成&活動を支援する「Think × Do」事業(https://yowono.wixsite.com/thinkdo)を営む。
【働く女性の皆さんへ】
働き方を変化させるということ、~身元保証も仕事も収入も会社頼りのサラリーマンから、案件ごとに違う仲間と協働するフリーランスへ~という変化にまつわる情報を発信していきたいと思っています。

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