3 ワークライフバランスの拡大と「働き方の未来」
ところで2000年代後半から今日に至るまでの約10年の「ワークライフバランス」の拡大を支えたのは、インターネットを介したコミュニケーションツールの急速な普及です。スカイプやfacebookが登場、話題になったのはちょうど「ワークライフバランス」という言葉が普及し始めたのと同じ2000年代半ばです。
これらのITツールはリモートワークを可能とし、子育てのために時間無制限に働くことが難しくなった方々がこうしたツールを利用して、働く時間や場所が限られても成果を出せることを示しました。
このように2000年代半ば以降、均等法第2世代のバリキャリ(およびその配偶者)がITツールを利用することで子育てのために働く時間が限られてもバリバリ仕事をするのと時を同じくして、20代後半~30代前半の方々による起業が注目されるようになります。私の個人的な感想ですが、この時代、注目された若い起業家の方々は、高学歴であるだけでなく、行動力があり様々な人の協力を引き出す人格、リーダーシップに優れた魅力的な方々が多かったように思います。
こうした方々もまたITツールを駆使してビジネスを興し、成長させていました。ITを駆使し、大胆な発想や行動力でスピード感あふれる事業を展開する彼らにとって重要なのは働いた時間の長さではなく、出した結果、成果です。物心ついたころから仕事も家庭も男女平等と教えられ育った均等法第3世代の彼らの中には、男性でも家事や育児を担うべきと考える人も少なくありません。こうして、彼らが徐々に子育て期に入った2010年代以降、働く時間が限られる子育て中のバリキャリや若手起業家の方々を中心に、働く時間や場所が制限されることは働く上での障害にはならずむしろ生産性向上に有益であることを指摘する声が増えてきます。
この記事を書いているさなかの7月29日付日経新聞に、「経済財政白書」の中で労働時間が短い国ほど生産性が高いこと、IT投資は生産性を高める効果があることが指摘されていること(月刊資本市場7月号)が紹介されていました。
ITを駆使して働く時間が限られる中で成果を出す方々は、IT投資によって短い労働時間で生産性の高い働き方をしており、「働き方改革」が目指す姿を体現している方々、働き方改革の最先端を行く方々といえるでしょう。
わずか20年前、仕事と家庭を両立させることができたのは、時代を切り開く一部の突出したパイオニアたちでした。20年という年月は、20代~30代前半の方々にとっては長く感じられるでしょうが、いまこの記事を読んでいる方々の大半にとって、50代前後でまだ十分に働ける、働かなければならない未来です。
働く時間や場所を自ら選び、働いた時間ではなく成果で報酬を得る働き方は今はまだ、突出した能力を持つ一部の人しか実現できていない働き方だとしても、20年後、その働き方が一般的になる可能性は十分に高いのではないでしょうか。
時間給ではなく成果給が当たり前になるとしたら、わたしたちはいま、どんな備えをすべきでしょうか?その答えは一つではありませんが、「未来の働き方」に関する情報を集めること、脱時間給で働いているロールモデルとなる人を知ること、は一つの備えになるように思います。
4 「未来の働き方」と触れるには
今年1月発足した一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会がメールマガジンで「新しい働き方」に関するイベントなどの情報発信をしています。またこの協会の会員企業であるWarisが運営するCueや、サーキュレーションが運営するビジネス・ノマドジャーナルには新しい働き方を実践されている方々のインタビューやイベント情報などが掲載されています。
同じく協会の会員企業であるエッセンスも、今般、「新しい働き方」に関する様々な情報発信するサイト、ハタラクミライというサイトをリリースしています。
こうしたサイトの閲覧やイベントへの参加は、読者の皆様にとって「新しい働き方」が身近にあることを教えてくれるよい機会になると思います。
残念ながら、こうしたイベントは現時点では首都圏が中心なのですが、前述のフリーランス協会が3月に東京で開催した「パラキャリ未来会議」の大阪版を10月27日(金)夜に開催予定です。また、これに関連する形で9月7日(木)には関西大学梅田キャンパスで働き方に関するフューチャーセッションを開催する予定です。詳細は私が運営する転石ビジネスサークルのHPその他でお知らせしますので、ご興味ある方は是非、ご参加ください。
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