3.実習生を送り出す家族の思い
今回のベトナム視察で、「娘を実習生として送り出したご家族のお家」を訪問させていただきました。
娘さんは3年間の実習を終えてすでにベトナムへ帰国し、働いていらっしゃいました。
ベトナムは、現在、新しい建物やマンションが次々と建っています。
伺う前は「実習生として送り出す家だから、すごくきれいで新しい家に住んでいらっしゃるのかな」と勝手に想像をしていました。
しかし訪問させていただいたお家は、お世辞にも綺麗とは言えない平屋づくりのお家。
きっちり仕切られているわけではなく窓もない家から、とても綺麗におめかしをしたお母さんが出迎えてくださいました。
そこでベトナムのお茶「ハス茶」を頂きながら様々な話を伺いました。
私「娘さんが日本に行かれるとき、淋しくなかったですか?どんな思いでしたか?」
お母さん「とても淋しかったです…。ベトナムは旧正月は家族みんなで過ごす風習があります。
だから、娘が居ない旧正月は本当につらかったです」
私「日本へ行くにはかなりのお金が必要だと聞きましたが?」
お母さん「はい。とても高いお金を払いました。でもね、娘は日本から帰ってきたとき、私たちに全部お金を返してくれました。
来年には、兄と一緒に家を建てるって言ってくれているんです」
技能実習生として日本に行く、というと「稼ぐために来るのかな?」と思います。
しかし、そもそも日本に実習生に来るということはそれだけで莫大なお金がかかっています。
今回の彼女のように親からお金を借りるだけではなく「親戚中から借金をして」という方もいらっしゃいます。
旅行最終日。
帰国の途につこうとノイバイ空港に行くと、それはもう、すごい人・人・人…。
この日は技能実習生として日本に旅立つ実習生がたくさんいました。
しかし、実習生だけで空港が溢れかえっているかというとそうではありません。
「親戚一同で見送りに来ている」のです。
ベトナムはいわば「昔の日本」と言ってもいいほど、「家族・親族の絆」が強く残っています。
だからこそ、実習生として送り出す時ということは親戚一同の一大事だということです。
中には別れを惜しんで涙ながらに手を振るお母さんの姿もありました。
私は感じました。
「日本で受け入れる企業の経営者、一緒に働く仲間はぜひベトナムに訪れるべきだ」と。
どんな想いで彼らは実習を行い、どんな想いで家族が送り出すのか。
その想いに触れた時、「ブラック労働」は絶対にさせられないはずです。
4.自分の目で、自分の肌で感じるということ
冒頭、このようなことを言いました。
「海外に住みたい」「海外で働きたい」と思いますか?
私は最近になって「アリかもしれない」と思うようになったと。
その第一の理由、それは「この目で(海外を)見たから」。
一言で言うと「食わず嫌い」ということです。
例えば、「ベトナム」と聞くと「バイクが多くて空気が汚そう」「お腹を壊しそう」
「虫が多そう」「暑そう」と色々なネガティブ要因が出てきます。
どうしても自分が知らない世界というのは「勝手に想像して」「勝手にできない理由」をあげてしまいがち。
しかし、行ってみるとそんな心配は取り越し苦労だったとわかります。
そして、現地で生活している人々にふれ、自分の目で・肌で感じると、
いかに自分が固定観念で視野を狭めていたかを実感します。
なぜなら、人は「いままでに自分が経験したことでしか判断できない」生き物だからです。
ここで書きたかったことは、日本で生活することがダメで、どんどん海外に出て行こう!というわけではありません。
そうではなく、まず「頭で考える」のではなく、まず自分の目で、自分の肌で感じてみると、想いは変わるかもしれないということ。
お子さんに「勉強しなさい!」「英語を身につけなさい!」と100万回いうよりも、
1回の海外旅行の方がお子さんの心に火をつけるかもしれません。
私は今回のベトナム視察で働き方、暮らし方を見直すきっかけをもらいました。
さらに、今後実習生を受け入れようとする企業、受け入れていらっしゃる企業の方とは、
家族の思いも含めて話をしていきたいとも思っています。
「できない理由」や「行かない理由」をあげるのではなく「できる方法」を考える。
私自身はそのスタンスで今後も色々な世界を見て、感じていきたいと思います。
■株式会社Niesul・KES社労士事務所
http://www.e-sr.info
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