働く女性の皆さんこんにちは。皆さんは「公認会計士」というお仕事をご存知ですか?最近は公認会計士業界でも、女性活躍やダイバーシティが進んでいます。そんな中、本日は「日本公認会計士協会近畿会」の女性会計士委員会の委員長の原繭子さん、副委員長の藤枝政雄さんにお話を伺いました。
1 原繭子さんと藤枝政雄さんのプロフィールについて
高野:本日はよろしくお願いいたします。まずは原さんと藤枝さんの簡単な自己紹介をお聞きしてもよろしいですか?
原:はい。私は大学卒業後、一旦は一般企業に就職し、30歳になる直前に公認会計士を目指すようになりました。一度企業で働いてから公認会計士を目指して勉強を始めたという点では、私は近年の傾向とは異なる珍しいタイプだと思います。そして勉強の末、ようやく試験に合格し、公認会計士として働き始めました。現在は、公認会計士として勤務しながら「日本公認会計士協会近畿会」の女性会計士委員会の委員長もつとめています。
高野:おぉ…!30歳を目前にして公認会計士を目指して大きくキャリアチェンジされるのは、とても勇気が要ったと思うのですが、きっかけは何だったのですか?
原:以前勤めていた会社で、マネージャーとして1つのお店を任せて頂いた経験から、「ヒト・モノ・カネ」をひっくるめた、いわゆる「経営」という分野に大きな関心を持つようになりました。そして30歳になる手前で「人生はまだまだ長い。でも、いつ何が起こるか分からない。だったらチャレンジしよう!」と思い、自分が携わりたい「経営」の道に進むことを考え始めました。
私の場合、父親が会計士対応の仕事をしていたので、会計士という仕事は身近な存在でしたし、試験制度や業務内容が「経営」というキーワードに一番近い資格ということで、公認会計士になることを決めたんです。
ですが、受験回数が増えると、通っていた専門学校でも毎年友達が一新していくので、その中で自分を常に鼓舞し続けるのは本当に大変でした。そんなある時、「このまま試験勉強を続けるか、いっそやめるか、ここらで決めないといけない」と思うようになったんです。
高野:何年にもわたって、自分のモチベーションを保ち続けるって、本当に大変なことですよね…。
原:そうなんです。親も心配していましたしね…。ただその時に「今諦めたら絶対に後悔する。断念した事実を背負ってこれから一生行きていくのは絶対に嫌だ。だったら、合格するまでやってやる!」と覚悟を決めました。そしてその後、無事に試験に合格することができました。
高野:かっこいいです…!では、藤枝さんのご経歴をお聞きしてもよろしいですか?
藤枝:はい。私は、大学は経済学部に入学しましたが、その時はまだ「公認会計士」という存在すら知りませんでした。ただ、経済学部ということで簿記を勉強するようになり、また友人がダブルスクールで「公認会計士」を目指していることを知り、公認会計士に興味を持ちはじめました。それが公認会計士を目指すようになったきっかけです。
大学在学当時はバブル期だったのですが「将来を考えるなら、公認会計士の資格を持ち手に職をつけるのが良いだろう」と思い、難しい試験であることは分かっていましたが、在学中から勉強を始め、卒業後に試験に合格し、監査法人に入社しました。
監査法人勤務して8年後、M&Aの仲介をする会社に転職をし、長男の出産をきっかけに公認会計士として独立開業し、今に至ります。
現在は2児の父親として、幼稚園の行事に参加したり、育児をしながら仕事をする毎日です。
高野:おぉ…素晴らしい!では、本日は、色々とお話をお聞きできればと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。
2 女性公認会計士委員会の位置づけと、公認会計士の仕事について
高野:では、「女性会計士委員会」の位置づけについて教えて頂けますか?
原:監査法人勤め、企業勤め、自営の違いを問わず、全ての日本の公認会計士が所属する組織として日本公認会計士協会という母体があり、その下部組織として各地に地域会が設立運営されています。この地域会の一つである近畿会(エリアは大阪府、奈良県、和歌山県)の中に、女性会計士委員会があります。
女性会計士委員会の大きな役割は「女性活躍」に関わるテーマを会員に対して推進していくこと。「公認会計士の業界も、働き方や制度を変え、更に女性がイキイキ元気に働けるようにしていこう」という大きな目的のもと運営をしています。
実は近畿会の「女性会計士委員会」は、男女雇用機会均等法が施行された昭和61年の翌年、昭和62年6月に正式発足しました。数ある地域会の中でも最も歴史があり、今から30年も前から女性の活躍の為に活動しているのは、全国的にも大変珍しいことなんですよ。
高野:30年前とはすごいですね…最近「女性活躍」が叫ばれ始めてから新設されたわけではないと思うと、その歴史にも重みがありますね。結成のきっかけは何だったのでしょうか?
原:当時、米山正次先生という方が 「これから世の中には女性の働きも必要になってくる」との考えで、「女性会計士委員会」の設立にあたり熱心に必要性を説いて下さったと聞いています。そして、関西初の女性会計士として有名な松浦圭子先生 を初代委員長として結成されました。
また、名称についても当時は「婦人」という言葉が一般的だったのですが、これからの時代の委員会なのだから名称には男性と対等な意味の「女性会計士委員会」にしようということになりました。
さらに「女性の為だけの委員会ではない」という考え方から「委員会のメンバー構成として、副委員長に男性会計士が最低1名就任すること」「委員は性別問わず登録可能であること」という方針を掲げ、30年経った今でもこれらは受け継がれています。
とはいえ、会を30年存続させるというのは、並大抵のことでは無かったようです。
高野:そうですよね…。また当時から「女性活躍」だけではなく、ダイバーシティという観点を持っておられたというのは、大変先進的ですね。
原:そうですね。
現在は特に「女性活躍」だけではなく「ダイバーシティ」という視点で運営を考えるようになりました。将来的には、障害をお持ちの方といったテーマも出てくると思いますが、当面の取組テーマとしては、女性と男性の両方を対象に、出産、子育て、介護、病気等があっても会員全員にとって多様な働き方を許容し、それを可能にするにはどのような施策が必要かを、一緒に考えていきたいと思っています。
高野:素晴らしい!胸が熱くなります…!では、そもそもなのですが…公認会計士とは、どういったお仕事をされているのか、教えて頂いてもよろしいでしょうか?私たちのように一般企業で働く女性にとっては、身近な存在としてのイメージができにくい職種でして…。
原:はい、そうですよね。公認会計士は、会計の専門家ということで、主には企業の会計監査を行うのが仕事です。 実際は公認会計士の大半が監査法人に入社し、上場会社の監査をする仕事についています。またそれ以外にも、企業に勤めて経理業務を行う会計士もいれば、自分で独立している方もおられます。
高野:なるほど…。藤枝さんのように大学在学中に専門学校で資格の勉強をして、卒業後合格したら監査法人や企業に入社するという流れが一般的なのでしょうか?
藤枝:そうですね。その時々で波はありますが、多くは大学在学中から勉強を始めて、一般の会社での社会経験なく監査法人に入る方が多いです。最近は、大学在学中に合格する人も増えてきました。学生の頃のほうが勉強時間も確保できますしね。
原:近年で言えば現在の30代半ばくらいの方は就職氷河期でしたから、さらにそのあたりから「大学在学中から勉強して公認会計士を目指す」という人がぐっと増えた印象はありますね。
高野:藤枝さんは24歳で就職されたわけですが、新入社員でもすぐに企業の会計監査の仕事を任せて頂けるものなのでしょうか?
藤枝:そうですね。入社してすぐに先輩の会計士に連れられて、クライアント先の企業に出向き、帳簿の数値等が正しいかどうかをチェックする監査の仕事をしていました。今は全部パソコンやシステムを使って仕事ができますが、当時は電卓片手に帳簿を見てましたね
原:そうそう、先方の帳簿を全て見せて頂いて、それを手元の調書に一つずつ書き写して、電卓を叩いて…気の遠くなる作業でしたよね。
藤枝:今は調べ物をするのもネットでできるので楽ですし、作業はPCを使いますので、以前に比べれば随分と仕事の生産性も上がったのではないでしょうか。その分、別の仕事も増えているでしょうが。
原:また日本の企業は3月決算が多いので、3,4,5月は公認会計士にとって一番の繁忙期。1人が複数社を担当しているので、朝A社を訪問し、夜はB社の会議に参加するということもあります。現在でも3,4,5月に関しては、みな多忙にならざるを得ないと思いますね。
高野:なるほど…。そうなると、この業界で女性が働き続けるのはやはり難しいのでしょうか?
原:頑張って資格を取得したけれど、妊娠や出産を期に退職し、資格更新をせずに業界から離れてしまう女性もいます。本当に勿体無いことですよね…。現在は、監査法人や企業でも、女性公認会計士が働き続けられるようにと、制度を工夫したりして仕事第一の働き方以外の働き方にも対応するよう変化させていっていますが、まだまだこれからですね。
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