3 2035年に向けて、キャリアの多重化を
「ほどほどに稼げればよいから自由に働きたい」という価値観はまさに、
「働き方の未来2035」が描く「働き手が自らの意思で働く場所と時間を選ぶことができる社会」を求めます。
ですからいまの20代の方の間に拡がる「金銭的豊かさよりも時間的、精神的ゆとりを求める」という価値観が今後より浸透すれば、「働き方の未来2035」が描く社会が実現される確率はより高くなる、少なくとも「働き方の未来2035」が描く社会の実現はより強く求められるようになると考えられます。
「働き方の未来2035」が予測する社会が求められそれが実現するのであれば、働き手は、自らの意思で働く場所と時間を選ぶことができるようになる必要性に迫られます。
「働き方の未来2035」は技術革新のスピードが速い中で働き続けていくためには、いったん身につけた一つの専門的な能力を変化させていく必要、つまりキャリアを多重化する必要性があることを指摘しています。
首都圏ではすでに30~40代の中堅のサラリーマンでも、同じ会社の人や仕事相手という限られた人間関係の中から出て、
自分の知らない仕事や全く違った生き方をする人とも一緒に何らかの社会活動を行う動きが見られるようになっています。
4 2017年に20代である方へ
いま20代の方は、学生時代に個人でイベントを開催したり、NPOなどで社会的価値を創造する活動に携わったり、ビジネスコンテストにチャレンジしたりして、「会社に頼らず働く」という経験をしている方も珍しくありません。
とはいえ学生時代にそうした「社外活動」をした方でも、就職して2、3年は目の前の仕事をこなすだけで精いっぱいで、社外活動から離れてしまうこともあるようです。
特にいまの20代の方は素直でまじめであるがゆえ、目の前の仕事に一生懸命取り組むあまり、
自分の会社や自分の仕事以外に目が向かなくなっていく方も多いようです。
「空気を読んで周りに合わせることが得意」と評されるいまの20代の方は、就職するとその会社の空気に合わせようとしてしまう傾向も強いでしょう。
ただし安定した「いい会社」に今いるのは、量的拡大、物質的豊かさを求めた経済成長期に成功した企業に入りそのままその中で仕事人生を全うしたいと考えている人が中心です。
こうした方々は「必要以上に働くより、収入が低くても精神的に豊かでありたい」という価値観を必ずしも持っておらず、「自分の意思で働き方を選び、会社に頼らず働く」ことを志向してはいません。
「朱に交われば赤くなる」ことは悪いことではありませんが、価値観や求める生き方が異なる職場、空気に合わせたところで、自らの心が求める生き方が切り開けるわけではありません。
学生時代、社外活動をしていたとしても、社会に出たばかりの20代であれば社外活動に充てられる時間は限られます。
ですから、社外活動を通じて自分が本当にやりたいことやキャリア開発をしたいという気持ちをいったん棚上げして、
目の前の仕事に打ち込むのはある程度は仕方がないことですし必要なことだとも思います。
いまの職場に閉じこもって煮詰まることを防ぎ、
ついでに、社外の人から刺激を受けてキャリア多重化の糸口をつかむ―
いま20代の方は、そんな気軽で自然体の社外活動を「キャリアの多重化の第一歩」とすればよいのではないでしょうか。
2
職種によって時間なんかで割り切れない仕事は山ほどあります。特にクリエイティブと呼ばれる業種は、アイデアが競合より落ちれば、プレゼンの費用さえ持ち出しななってしまう程過酷なのです。
時間で割り切る事を辞めなければ生きて行けない職業もあるし、また逆に好きな仕事だから仕事もプライベートもけじめをつけないという業種もあります。デザイン、イラスト、脚本、漫画、作詞作曲、演劇、映画、彫刻、それ以外にも専門家と言われるまでになると、嫌々していた仕事にプライドを持てるようになり、好きになるのとプライドの面子が出来るのとで、時間関係なしに変化する物もあります。
「金銭的豊かさよりも時間的、精神的ゆとりを求める」=「働き手が自らの意思で働く場所と時間を選ぶことができる社会」の成り立つ世界もあれば、精神的ゆとりを求めたら場所と時間を選ぶことなど無くなるパターンもでてきます。
仕事=嫌な物という前提でない業種がたくさんあるのと、時間で割り切ると飯がくえなくなる業種があること。
これらをきちっと見直してみてください。それらは、AIではできない仕事だったり、外国でクールと評価されている文化だったりするのが見えてこないでしょうか。
西洋風の概念で切られるとこの国の良さや強みが無くなるような気がします。がむしゃらでもなく、けじめもつけずにうだうだしながらハイレベルな物に仕上げて行く世界がある事も想像していただければと思います。
官僚の考える十葉一絡げの方針、往々にしてクリエイティブな産業の業務を阻害している事多かったりするのです。