20年後の社会と働き方改革~vol.4 30代の仕事と出産の兼ね合い


3 子供の成長ステージと働き方

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「子育てをするか否か」決断するためには、子育てがどのようなもので働き方にどのように影響するか知っておくに越したことがありません。
私は子育ての専門家ではないので専門的な話はできませんが、子育てに重きを置きながらもよい仕事をしたいと考える普通のワーカーとして思うところを書いてみます。

私の子供は上の子供が今、小2年生なので小学2年以降については未経験なのですが、昨年から1年間、主婦生活をしながら公園で遊ぶ子供たちを見て見えてきたのは、

①生まれてから2、3歳頃までの乳児期

②3,4歳頃から小学校入学までの幼児期

③小学校入学~10歳頃まで

④小学校4年頃から中学校卒業まで

⑤高校以降

という5つのステージです。
これら5つのステージは子供の成長ステージであり、ステージごとに子供とどのように関わるかが異なるように私は感じています。

まず①のステージですが、このステージの子供は喋るといっても片言であり、「人間」というより、可愛いけれどものすごく世話が必要な動物のように私には感じられました。
私は母から「子供が生まれた時、3年の辛抱だと思ってすべてを我慢した」と聞いており、このステージでは「3年の辛抱」だと割り切って自らの欲望の一切を断念にして無私無欲になり、目の前の「やるべきこと」をこなして何とか生き延びた感じでした。

このステージを過ぎて②のステージに入ると子供は意思や感情を表しておしゃべりもするようになり、私は人間として向き合う必要が出てきたと感じました。
②のステージ以降、子供は幼稚園や学校に通い出し「子供の世界」を作るようになります。
そのため、子供が子供の世界で過ごす時間内、親は「好きに働く」こともできます。
ただし②、③のステージの子供は「子供の世界」を持ちつつも親を絶対の存在としてまっすぐに親を求めますし、この時期の子供は今のご時世、一人で行動させるのは危険でしばしば親は子供に付き添うため、親の自由時間は依然として制約されると感じています。

④のステージに至って子供は親から遠ざかり始めるのですが、このステージでは子供は親が自分を見ているかを常に気にしているため、この時期ではまだ子供から離れるわけにはいかないように感じられるのではないかと思います。
私の感覚では親が子供から離れて子供を見ていればよいと子供が思えるようになるのは14,5歳頃からなのではないでしょうか。

子育ては、親を必要とする子供が存在するから必要なものであり、子供が絶対的に親を必要とする間、つまり最短でも③のステージまでは、働ける時間が多少なりとも制約されることは避けられないと思います。
つまり子育てすることを選択するということは、一定の制約のある働き方をすることになるということだと思います。

自由に動ける時間が限られる中で仕事をする場合、仕事をするために必要不可欠なコミュニケーション以外を割愛したり、参加義務のない集まりやセミナーから足が遠のいたりします。
そうすると、ネットなどでは得られない生の情報や人脈が得られず、業界動向にも疎くなります。
私自身、仕事の成果が働く時間の長短と全く関係ない仕事をしているのですが、たとえ成果が労働時間に左右されない仕事に従事していたとしても、働ける時間が限られることは働く上でのハンディになると思っています。

このハンディは働きながら子育てする人の多くが感じるようであり、会社員時代の復職後研修で、第1子の育児休暇から復職した30代前半の女性はみんな、働く時間が限られることの苦しさを語っていました。
特に子育ても仕事も大事と思う人は、このハンディを乗り越えようと無理をして睡眠時間を削ったり子供といても仕事のことが頭から離れない、となってしまったりするようです。
かくいう私もうっかりすると子供と一緒にいるのに仕事をして、無意識のうちに働く時間が限られるハンディから逃れようとしてしまいます。

4 2035年に向けて30代をどう乗り切るか

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このように子供を抱えていると自分のために使える時間がほとんどなくなり、子育てと仕事以外のさらに別のことをするのはほとんど不可能です。
となると、子育てしながら働く人はキャリアを多重化できないのかといえばそんなことはないと考えています。

子供を育てるということは、大人には必要ないけれど子供には必要な様々なモノやコト、環境を整備するタスクを背負うことです。
企業人としての感覚を保持してこのタスクを遂行すると、子育てに関する様々な社会課題が見えてきて、子供を育てない限りは必要のないモノやサービスの必要性に気が付きます。
つまり子育てすることで、商品/サービスを提供する企業の立場ではなく、子供が生れ育ち生きるために必要な商品やサービスを求める生活者として、経済社会や企業活動を見ることができます。

このように異なる視点を持つこと、経済合理性や効率優先で動く仕事の世界とは全く別の世界に入ること、

その中で仕事の世界では出会わないほど考え方や振る舞いが違う人と会話し、

時にはPTAなどの活動をご一緒することはまさに、

自分自身をリセットして別の自分を創造する「キャリア多重化」に他なりません。

ちなみに私は子育てをし、その利点を感じてはいますが、だからといって子育てすることを勧める気はありません。
友人の母の言葉ですが「子供がいてると喜びもあるけど、心配せなあかん。子供がおらんのは寂しいけど、心配せんでいいから、子供がおんのがいいとも限らん」という言葉が実に的を得ていると思っています。
世の中で人々がどちらにすべきか悩む選択肢には必ず長短両方があり、「子育てする/しない」もその例外ではなく、どちらにもメリットとデメリットとがあり、どちらがいいかは各人それぞれが判断することだと私は思っています。

いずれにせよ、子育てするかしないかを腹決めしたのであれば、子育てをするにしてもしないにしても「これでいいのか」と悩む必要はないと思います。
子育てをしていないのであればその身軽さを活かして本業にいそしむ傍ら、社外に出て学び直しをしたりプロボノなどの活動に参加したりして、会社に頼らず20年後を生き抜くための人脈や経験を得ればよいのです。
子育てしていれば、子育てする生活者として見える世界を存分に探究して「企業人であり生活者でもある」という複眼を獲得することで、子育てする場合に不可避な「自由に動ける時間が限られる」というデメリットを相殺すればよいのです。
「保護者」という立場で遂行する子育てというタスクは、組織の中で割り当てられるタスクに比べて自分の自由度も責任も大きく、「自分事」として真剣勝負を余儀なくされます。
仕事とは全く違う世界で「自分事」として背負う「親の務め」を果たすことは、仕事とは別の活動に従事する「キャリア多重化」にほかなりません。

私自身、チャレンジに踏み切りにくい40代であるにもかかわらず、子育て中であるからこそできるチャレンジをしています。
そのチャレンジは苦しくはありますがそれ以上に気付き学びが多く、キャリアの多重化になっていると実感しています。
ですから30代のあなたがいま子育てに時間を割き、仕事に打ち込めないと感じているなら、それはまたとない「キャリア多重化」の時間なのだと割り切れることを応援しています。

 


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小野 曜(おのよう)
転石 知財事務所 / 弁理士 転石 ビジネスサークル/代表
【プロフィール】
1998年 京都大学大学院農学研究科 修士課程修了、同年、栗田工業株式会社入社。2002年弁理士資格取得、2003年~2008年まで国内特許・法律事務所勤務。2008年~2015年 株式会社野村総合研究所勤務。途中、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、日本弁理士会「知財コンサルティング検討委員会」「研修所運営委員会」などを歴任。
2015年 野村総合研究所退職、転石 知財事務所設立。弁理士として、商品・サービスの独自性を特定、独自性を利益の源泉とするビジネスモデル、差別化戦略、模倣防止策の立案と実行を手掛ける。また、転石 ビジネスサークル代表として、プロフェッショナル人材が所属を超えて集まり課題解決を図るタスクフォースの編成&活動を支援する「Think × Do」事業(https://yowono.wixsite.com/thinkdo)を営む。
【働く女性の皆さんへ】
働き方を変化させるということ、~身元保証も仕事も収入も会社頼りのサラリーマンから、案件ごとに違う仲間と協働するフリーランスへ~という変化にまつわる情報を発信していきたいと思っています。

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