20年後の社会と働き方改革~vol.2「2035年の働き方予測」〜


3 40代から55歳~大勢を左右する「どっちつかず」の世代

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この年代には1965~69年生まれの「バルブ世代」と1970~80年代前半生まれの「氷河期世代」とが含まれます。
長山靖生氏『世代の正体』の記述を借りれば、バブル世代は「世の中は安定成長期に入り、…社会システムは完成され、子供たちにも管理教育の価値観が内面化された。
それは同時に、ドロップアウトすることの恐怖、決められた価値体系以外の有効な選択肢の喪失という事態につながっていく」中で育っています。

社会が安定して社会システムが完成し、決められたレールの上を走る以外の選択肢がなくなっていったのはこの30年の傾向であり、
バブル世代以降の世代は誰も「決められたレールから外れる恐怖」を感じながら育っています。

ただしバブル世代は大学卒業時、難なく「いい会社」に入り、バブル経済の中で高度消費社会を経験しています。
なお高度消費社会については、『世代の正体』の中で「必要な品物がなんでも手に入るようになった『消費社会』を越えて、不必要なものへの購買意欲を駆り立てることで回る社会」と解説されています。

バブル世代は社会人としての駆け出しこそラッキーであったものの、バブル採用後に採用が抑制されたため多年に渡って「職場内最年少」であり続け職能向上の機会に恵まれなかった挙句、中年期に至ってリストラ対象となっています。
しかも消費の蜜の味は忘れられず、決められたレールを外れる恐怖から逃れる術も知らないため、収入が抑えられ不遇を囲って会社を辞めたくとも辞められない人も多い世代であるように見えます。

一方の氷河期世代はバブル世代の就職事情の特異性や甘さに気が付かずに、うっかり「決められたレール」に乗り損ねていたという人が大量に発生した世代です。
氷河期世代の周りでは、「決められたレール」から外れて転落していく人もいれば、決められたレールから外れて「お金で買えない幸せ」「仕事をする喜び」を手にした人もいます。
氷河期世代の周りにいる「決められたレール」から外れた人は、主に学校時代の友人であり、ごく身近な存在です。

氷河期世代はいま、不遇を囲っても消費のための収入を欲しがり「決められたレール」から外れる恐怖から会社を辞められないバブル世代と、「決められたレール」を外れた同世代とを眺めながら自らの道を決める分岐点にいるように感じます。

仕事にありつくチャンスが多い首都圏では「決められたレール」を外れて幸せに生きていけている「普通の人」が身近にいます。
一方、関西では「決められたレール」を外れて楽しげに生きていけるのは特別に元気であったり特別な才能があったりする「普通ではない人」が多いように感じます。

この差が、首都圏では氷河期世代~バブル世代のごく普通のサラリーマンでも決められたレールを外れることを志向する空気を作り、関西では氷河期世代~バブル世代が組織を離れて生きることを志向しない雰囲気を作っているのではないかと思います。

少し話はそれますが、ヒトの腸内には腸内環境をよくする「善玉菌」と、悪くする「悪玉菌」、
どちらでもなく多数派につくという「日和見菌」がいるといわれています。
善玉菌、悪玉菌はそれぞれ2割ずつ、残り6割が日和見菌で善玉菌が増えて3割になると日和見菌が善玉菌について腸内環境はよくなり、悪玉菌が増えて3割になると日和見菌が悪玉菌について腸内環境がよくなるのだそうです。

「働き方の未来2035」に対しては30代以下は東西とも同意派が多く、55歳以上は東西とも懐疑派&無関心派が多い中、40代から55歳は「日和見菌」のように見えます。
首都圏では40代から55歳が同意派になびくため、首都圏での全体的な雰囲気は同意派優勢、関西ではその逆となる、という見立てです。

4 いまの、そしてこれからの新たな社会に対応しよう

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毎日新聞社から2012年に出版された『リアル30‘s』という本には「決められたレール」を外れた30歳前後の人が紹介されています。
「いい車に乗りたいとかも思うけど、今の働き方を変えてまで手に入れたいものじゃない」「年収はどんどん下がるだろうし、仕事も減る。だったら、お金で買えていた豊かさや幸せを、地域のつながりや一緒にお茶を飲める場所から得ればいい」という彼らは30代以下の方にとっては遠い存在ではなく、
彼らの言葉に共感する方も多いでしょう。

一方で55歳以上、特に離転職を経験することなく実質的に同じ環境で暮らしてきた方にとっては、この本に登場する方々は「新聞記事になる」くらいに特別で自分とは遠い世界を生きる人に見えるのではないでしょうか。
「決められたレール」を外れてもキラキラと生きる若い世代を遠い存在と思うシニアは、職場と家庭を行き来してそれ以外の世界を知らずに生き、決められたレールを外れて生きる人と出会う機会を持たずにいたにすぎません。

いまの30代以下の方々には、この世代の親に「真面目に勉強していい大学、いい会社に入れば人生は安泰だ」と教えられて育った方も多いと思います。
それはこのシラケ世代の方々が、彼らが生きた時代に適応し成功したからこその「親心」からの教えであり、彼らが自分たちの世界に閉じこもりすぎたがゆえに時代の変化や新しい生き方を身近に見る機会を持たなかったために過ぎません。

『リアル30‘s』に出てくる大阪府の男性は「一生懸命勉強してよい大学に入り、よい企業に就職すれば安定して暮らすことができると教え込まれた。ところが、日本の状況が変わってしまった。」と書いています。

人間は老い、社会は変わる。

日本ではほとんどの人が諸行無常という言葉は知っているのに、この30年間、私たちは人も社会も変化することを忘れてしまっていたのではないでしょうか。
すべては変化するということを忘れていたことは誰の罪でもなく、レールの上を走りそれを勧めるシニアを批判し、世代間で対立することに意味はないでしょう。

生きとし生けるものはすべからく変化に見舞われます。
変化に対応できたものは生き残り、対応できなかったものは衰退します。
そしてその、変化に対応できるかできないかを分けるのは、変化を受け入れて対応しようとするか否かという自らの意思であり、誰かとの競争ではないのです。

※「転石ビジネスサークル」は「転がる石に苔むさず」を語源とし、変化必定の世の中に対応することを終局的目的としています。
直近では2017年2月15日(水)19:00~グランフロント大阪で、例会を開催します。
参加資格は設定していませんので、ご興味ある方はこちらから。
申込時にWoo!を見たと書いていただければ嬉しいです。


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小野 曜(おのよう)
転石 知財事務所 / 弁理士 転石 ビジネスサークル/代表
【プロフィール】
1998年 京都大学大学院農学研究科 修士課程修了、同年、栗田工業株式会社入社。2002年弁理士資格取得、2003年~2008年まで国内特許・法律事務所勤務。2008年~2015年 株式会社野村総合研究所勤務。途中、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、日本弁理士会「知財コンサルティング検討委員会」「研修所運営委員会」などを歴任。
2015年 野村総合研究所退職、転石 知財事務所設立。弁理士として、商品・サービスの独自性を特定、独自性を利益の源泉とするビジネスモデル、差別化戦略、模倣防止策の立案と実行を手掛ける。また、転石 ビジネスサークル代表として、プロフェッショナル人材が所属を超えて集まり課題解決を図るタスクフォースの編成&活動を支援する「Think × Do」事業(https://yowono.wixsite.com/thinkdo)を営む。
【働く女性の皆さんへ】
働き方を変化させるということ、~身元保証も仕事も収入も会社頼りのサラリーマンから、案件ごとに違う仲間と協働するフリーランスへ~という変化にまつわる情報を発信していきたいと思っています。

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