「書くことで世界を元気に」−書道家本山裕子さんの好きを仕事にする生き方


Chapter2.これまでの私

2-1:大学生-新卒入社後

ーなぜ人材系の会社に新卒で入社したの?
学生の頃は、なりたいものや目標はありませんでした。大学3年生の秋、友人が就活を始めだしたときでさえ、私には企業で働くイメージが全く湧きませんでした。企業の採用活動も終盤にさしかかったころ、ようやく「みんな就活しているし、自分もしなければならないかな」という気持ちで就活をスタート。「私にはやりたいことがわからないので、会社に入ってから見つけよう。それには、様々な業種や職種の人達と出逢える人材系がベストではないか」と思い、人材系メインで探し始めました。そして有難いことに、採用や研修事業を行う人材系の会社に内定を頂き、入社しました。

ー入社後はどのような仕事を?
入社後は営業に配属になり、様々な業種の方とお会いしました。私は実はとても不器用な人間で、メール1通送ることさえ「あーでもない、こーでもない」と1時間ほどかかってやっと送信する始末。人前で話すことも大変苦手でした。ですから「仕事は同期の何倍も頑張らないといけない」という思いで必死で働きましたね。そして1年目の終わりには、受注が増える中、これまでにない大きな受注を頂くことに。ただ、受注業務の処理が全然追いつかず、当時の社内事情も相まって結局容量オーバーになり、精神的にも追い込まれてしまいました。

ー精神的にも追い込まれたというのは…?
ある日電車に乗っていると、「つーっ」と一筋の涙が頬をつたうのがわかりました。一度涙が出るともう止まらなくなり、会社に出社してからもその日は1日中涙がとまらず…。「これではだめだ、自分が潰れてしまう」と思い上司に退職の話をしたところ「1ヶ月だけ休みをあげるからゆっくり考えなさい」と温かい言葉を頂き、アイルランドで3週間滞在することにしました。私、メール1通送るのは1時間もかけるのに、こういう部分に関しては直感に従ってすぐに体が動くんですね(笑)

2-2:アイルランドでの転機

ーアイルランドでは何を?
アイルランドに行き、自分の人生について真剣に考え、こんな風に思いました。「世の中には、好きなことを仕事にしている人がたくさんいる。その人たちはキラキラしている。私もそんな風に生きたい」と。昔から「趣味や好きなことを仕事になんてできないよ」と周りに言われたり、「好きなことを仕事にするなんて甘い考えだ」と思うことがありましたが、私は好きなことで食べていくと決めました。その時にパッと頭に浮かんだのが書道だったんですね。

ーなぜ書道だったの?
私は小学生の低学年から中学生まで書道を習っていて「私は、字を書くことがとても好きだった」とピンときました。理屈ではなく直感でしたね。アイルランドから帰国した後は上司に「せっかくお休みを頂きましたが、書道家になると決めたので会社を辞めます」と伝え、退職しました。よく働く女性の皆さんから「好きを仕事にしたいが本当にできるのか?」といったお悩みを聞きしますが、まずは「好きを仕事にする」と決めることが大事。そう決めれば、脳が好きなことを探し始め、勝手にその状態に近づいていきます。「好きを仕事にするなんて無理だ」ではなくまずは「好きを仕事にする」と決めること。私の周りで好きを仕事にしている女性は、共通してこの考え方を持っていますね。

2-3:書道の道へ

ーそこからすぐに書道教室を開いた?
書道師範資格も持っていなかったため、まずは派遣社員として働きながら仕事以外の時間に書道学校に通い、資格を取得しました。しかし「書道」というと、おばあちゃんが自宅の一室で近所の子供を教えるといったイメージしかなく…。「それで本当に食べていけるのだろうか・・・」と不安に思いながらも、一生書道と関わっていきたい一心から行動を起こしていましたね。

ー筆跡心理カウンセリングもされているがそれはどういうきっかけで?
小学生の頃から、人の心理や心の動きについて関心があり「何故この人には、こんなことばかり起こるんだろう。何故この人は、相手を怖がらせることを言うんだろう。その理由が知りたい、将来は心理学を勉強したい」とぼんやり考えていました。さらに書道の道に進み始めた頃も「書道の先生でも、筆文字とホワイトボードに書く字は違う」「きれいな字だけど好きじゃない。汚い字なのに好き」と思うことがあり、調べたところ「筆跡心理学」という存在を知り、そこから勉強をはじめたんです。

ー字を見るだけで、その人の状態が全て分かる?
はい。体と心は繋がっているため、美文字を書くには、まずは内面を整えることが大切です。一例ですが「17歳の時から私は40歳で死のうと思って生きてきた」という方と、その方が39歳の時のある日、出逢ってしまったんですね。事業も手広くされており、周囲からみれば成功をおさめているように見える方でした。当時は筆跡診断を始めたばかりでしたが、自分の名前を書いて頂くと、その方の内面がそのまま字に表れていたんですね。そこで「こういう書き方に変えてみてもいいかもしれません」とお伝えし、3ヶ月後。その方から連絡があり「本山さんに言われた通りに、自分の字を何万回も練習して書いていたら、本当に人生が大きく変わリました!ありがとう!」とおっしゃったんです。それはもう別人のようになっておられて、私自身が大変驚きました。その方が素直に何万回も練習されたことはもちろんですが、良い方向に変わっていく人たちを目の当たりにしているうちに、次第に「筆跡心理カウンセリング」の仕事に自信を持って進んでいけるようになりました。

→本山さんが描く未来とは?…


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