Chapter2.これまでの私
2-1:学生時代
ーもとから英語が好きだったの?
井野:中学生の頃、英語暗唱大会で優勝した姉が、優勝特典で海外に行かせてもらったのを目の当たりにし、英語に興味を持つようになりました。英語暗唱大会とは、「星の王子様」や「フランダースの犬」といった物語の文章を舞台で暗唱し、その順位を競う大会。肝心の私はというと…大会での結果は4位。賞品はMDプレーヤーでした。子ども心に「優勝は海外で、4位はMDって賞品の差があり過ぎ」と思いました(笑)
杉浦:すごいですよね。僕は英語が全くだめなので、話せる井野さんを尊敬します。といってもこれからは英語必須の時代ですね。
井野:ありがとうございます。大学時代は、メルボルンとバンクーバーに短期留学に行きました。また当時は、「外国の方を世界中から呼び集めて開催するイベント」も実施していました。ただ、普段はあまり英語を使わない生活だったので、イベントの直前になると英会話学校に通いつめて必死で英語を勉強するようにしていました。
ー大学生の頃から英語はペラペラ?
井野:いえ、それがそうでもなく…日常会話はある程度出来たのですが、仕事使えるレベルではありませんでした。実際に話せるようになったのは、自分でこの会社を立ち上げてからです。なんといっても、必死さが違いますからね(笑)
杉浦:さきほど、英語で先生とやり取りされているのを聞いていましたが、大変流暢でかっこよかったです。もちろんご本人の努力の賜物ですが「帰国子女でなくても、ここまで話せる」というのは、純粋な日本人からすれば大きな希望になりますね。
2-2:杉浦さんとの出会い
ー杉浦さんと井野さんの出逢いのきっかけは?
井野:2010年頃です。お世話になっている経営者の方から「保険会社で働くすごい人がいるから、お会いして勉強してみたら?」とご紹介頂いたのが、杉浦さんでした。ただ初めてお会いした時はご挨拶程度であまりお話できず、そこから約1年はフェイスブックで繋がっているだけでした。その後、杉浦さんと一度お会いする機会を頂き「実は会社をやめて独立しようかどうか迷っている」という相談をしました。
杉浦:初めてお会いしたのは僕の前職入社20周年記念のパーティーを経営者の皆さんが開いて下さるということで、その打ち合わせの席でしたよね。その後ご相談頂いた時には、独立について大変迷っておられました。でも、「やるなら早い方がいいんじゃないですか?自分でやってみたらどうです?」というお話をしたのを覚えています。当時まだ会社員だった僕が偉そうに言うのも何すけど…(笑)
ー井野さんはもとから行動力があるタイプ?
井野:いえ、石橋をたたいて割ってしまうタイプです(笑)でもこういった事業の場合は、初期投資も少なく抑えられるので、なんとかいけるのではないかと考えました。
杉浦:井野さんはインバウンド事業の先駆けですね。「爆買い」や「インバウンド」と言われる前から、目をつけておられました。
井野:ありがとうございます。月刊誌を発刊して以降、次第に「観光客向けのサービスを手伝ってもらいたい」と言われるようになり、心斎橋界隈のクーポン紙を作り始めたのですが、実はこれが今大変好評で、観光客向けのものはニーズが高いですね。今では、飲食店の外国人観光客向けメニュー作り、電鉄会社の社員さんへの英語教育、駅の張り紙チェック、ショッピングモールの店員さんへの英語研修等もしています。
杉浦:これからはそれらの研修もパッケージ化できるといいですね。メニュー化することで、事業として更に広がりが出てきそうな気がします。
2-3:インバウンド関係の仕事について
ー英語を訳すのに難しいことって何?
井野:例えば、以前焼肉店のメニューを作る仕事をたくさんさせて頂いていたことがあるのですが、カルビやホルモンといった部位を、全部訳すためにかなりの勉強やリサーチが必要で、やりがいがある仕事でした。部位によっては朝鮮語が語源だったり、日本語が語源だったりと様々で、おかげで「牛の生体」にかなり詳しくなりましたね(笑)…ちなみに、「ミノ」は「ファーストストマック」と訳します。
杉浦:えー…「1つ目の胃」ということですか?リアル過ぎて食べる気が失せますね…
井野:外国人観光客の8割はミノを食べないらしいです。ですから「直訳するとこうだけど、ここまでは書かないほうがいい」「逆に表現はこう変えたほうがいい」等、メニューをただ単に訳すのではなく、どうすればメニューに興味を持ち注文頂けるかも考えて、今ではノウハウもかなり溜まりました。提供できるコンサルティングの質は確実にあがってきたと自負しています。おかげさまで、今までに500店舗を超えるお店のメニューに携わらせていただています。
ーそういうことが出来る会社はあまりないの?
井野:いわゆる翻訳会社ありますが、当時は高額なので、飲食店の方はとても頼めない状況ではありました。
杉浦:翻訳会社は「何文字以上でいくら」という価格設定がされていて高いところが多いですよね。ですから井野さんの会社に大変引き合いが多いのだと思います。また、「インバウンド」と言われ出してからやり始めたのではなく、5年前からやっているというのが強い。
井野:現在はインバウンドの流れが来ているので、新しいサービスをリリースし勝負に出ています。後発で市場参入する会社も増えてきましたが、5年前からやっている強みを活かし、今の市場で求められていることに丁寧に応えていくつもりです。
ー英語ビジネスで大変なことって何?
井野:訳し方や解釈、ニュアンスといったソフトの部分ですね。例えば海外の空港に置いてある、日本語の無料のガイドブックは「日本語で書いてあるけれど、どこか外国っぽい」と思いませんか?同じように日本で外国の方や外国人観光客向けに媒体をつくる際、いかに外国の方が見て自然か、外国っぽい感覚をいかにうまく橋渡しして作っていけるかが大事です。
少しでもニュアンスに違和感を感じると、その媒体の信頼性も下がってしまいますので、当社の講師陣と、とことん膝をつき合わせて「これは変だ」とか「表現をこんな風に変えよう」という風に、細かな話し合いをしながら進めています。どこまで考えぬくか、きめ細やかにできるかがカギとなる中で、当社のクーポン紙はおかげさまで外国人観光客に大変人気があり、お客様からもご好評頂いています。
杉浦:井野さんは行動力はもちろんのこと、人と会うことで見えたニーズやヒントをもとに、角度いいものに変えていかれるところがすごいと思います。小さなきっかけをしっかりお仕事に変えていかれる力が非常に強いですね。柔軟で、かつ行動力があり、必ずやり遂げられる。本当にすごいです。そういえば…以前はあまり寝てないという話をお聞きしましたが、最近は寝られてますか?
井野:あ、寝てます(笑)今はだいぶペースが掴めてきました。今でも常に課題はありますが、インバウンド方面に関しては、明確にやり方が見えてきました。どうすれば効果が出やすくなるか確信が持てるようになってきたので、これからの展開が大変おもしろくなりそうです。
杉浦:途中で辞めずにやり続けておられるから、ストライクゾーンが見えてくるんでしょうね。
井野:今では私も心斎橋にかなり詳しくなり「こんな面白いところがあるよ」とオススメしたいお店がたくさんあります。例えば、外国人女性観光客向けに男前がマッサージするマッサージ店なんていうのもあります(笑)立地は決して良いとはいえないのですが、プロモーションをし多くのお客様に来店頂くために、お店の皆さんは本当に果敢な挑戦をされています。
→地域活性化事業としてのインバウンド… |