Chapter2.事件は現場で起きている
2-1:研修中に起きた出来事
ーその企業様に関わられたお話、詳しく聞かせてください
木村:社長と幹部の方にチームビルディング研修をさせて頂きました。すると3回目の研修中、参加頂いていた幹部の方のお一人が、私の発言が気に障られ怒鳴り声をあげてこうおっしゃったんです。「あんたはこの研修をして生産性が上がるって言うけど、何も変わらん!これやったら、この時間に自分の仕事をしている方がよっぽど生産性が上がる!おまえ(社長)もこんな人連れてきたところで、俺たちは変わらんからな!」と。
さすがに私もびっくりして、その日の研修は大汗をかきました(笑)でもね、その時に気づいたんです。「そうか、皆さんは、私が皆さんを変えにきたと思っておられるんだな」って。そこでこんな提案をしてみました。
「今から研修をやめて、皆さんで会議をしませんか?」と。
杉浦:おぉ…。
木村:「私は皆さんを変えに来たわけじゃない。みんな毎日、お客様のこと、家族のこと、会社のことを真剣に考え、一生懸命頑張っている。朝起きて、会社に来たら戦争のように仕事がはじまり、仕事が終わると家に帰ってお風呂に入って次の日を迎える…言い方は悪いけれどハツカネズミ状態になっていて、大事な自分のことが一番後回しになってしまっている。
だったら、1ヶ月に1回くらいは立ち止まって、”何のために今の仕事ををしているのか” ”自分たちは何処に向かって進もうとしているのか”、自分の中で向き合う時間にしませんか?」と伝えました。
杉浦:みんな会社をダメにしたいと思っているわけじゃない、会社を良くしたいと思っている。それには社長や幹部の皆さんがお互いにしっかり向き合わないといけないですよね。
ーそしてその後、皆さんの反応は?
木村:皆さん答えは自分の中にしっかり持っておられます。社長にも「社長は私をいれれば、会社は変わると思っておられるかもしれませんが、それは違います。今、ここで何が起こっているか、まずはみんなが向き合って、腹据えて話をすることからはじめませんか?」と伝えました。その上で研修の内容が今の皆さんの状況に当てはまらないのであれば変えたって良いし、私がいない方がいいならやめてもいい。これは皆さんの時間だから、皆さんに価値のある時間の使い方を考えましょう、私は皆さんの意見の交通整理をするだけですと。
杉浦:その日は、大声で怒鳴った社員さんが、研修後エレベーターに乗ってビルの前まで送って下さって、「先生ありがとうございました!また次回からも是非研修よろしくお願いいたします!」とおっしゃったんですよね。後からお話を聞いて、本当にすごいと思いました。木村さんは、人の人生や、会社を変えるきっかけを作っておられる。短時間で参加者の方の心をそこまで動かしたのは、様々な経験を乗り越えて来られたからこその木村さんの深み、重みがあるからだと思います。机上の空論では絶対そうはいきませんよね。
2-2:CA時代の壮絶体験
ーCA時代の木村さん、どんな経験を乗り越えてこらえたのか知りたいです
杉浦:木村さんはCA時代から、相当な修羅場を経験されています。あのアメリカの同時多発テロ「911」もくぐり抜けて来られたんですよね。あの時まさに、雲の上で飛行機に乗っておられたと聞いて驚きました。
木村:はい、その時は、別の飛行機に乗務していました。機内では情報が少なく、テレビの画像も見れない中で重要な判断をしなければならず、みんな必死でしたね。
杉浦:今のように、twitterやfacebookはありませんし、空の上で情報が無い中で判断するのは並大抵ではないはず。でも逆にtwitterやSNSがあったなら、情報が錯綜してもっとパニックになっていたかもしれませんね。
木村:当時私はCAの長だったので、機長にコックピットに呼ばれて「とにかくこのカンパニーラジオを聞いてくれ」と言われました。イヤホンを耳に当てると、管制官と飛行機の交信が聞こえるのですが、「ハイジャック、ツインタワーに飛行機が衝突、ペンタゴンに、●機がハイジャックされてる…」という声が聞こえてきて…これは異常事態が起こっているのだとすぐに解りました。まずは「この事実を乗客に知らせるかどうか」…これも私の判断に委ねられました。
ーまさに異常事態…木村さん自身はパニックにならなかった?
木村:それが不思議と、制服を着ていると冷静になるんですよね。スタッフとも「とにかく私たちがしっかりしよう!」と気持ちを1つにして、様々なシミュレーションをし、対応しました。飛行機を降りた日は、さすがにCAのみんなは怖かったのか、全員私の部屋で寝ましたね。「もう大丈夫だから自分の部屋で寝たら?」と言っても「一緒に寝させて下さい!」って(笑)みんな必死だったから、どっと疲れたんだと思います。
杉浦:その他にも日常的に、怒鳴られること、クレームなんかも、色々あるんでしょうね…。都度どのようにして気持ちを消化しておられたのですか?
木村:正直言うと、ゲームにしないとやってられなかったですね(笑)終わりよければすべて良し!という気持ちで、「誰があのお客様の心を掴むか!」「あのお客様をいかに笑顔にするか」という風にゲーム感覚で対応するようにすると、どんなことも大抵は楽しく乗り切ることができました。体力と気力が勝負な世界ではありましたが、本当に鍛えられました。それらの経験は、全て今に生かされています。感謝ですね。
杉浦:本書けますよね。ドラマ何本でも作れそう(笑)
→木村さんがコーチングと出会ったきっかけは?… |